この一句・2006
2006年1月7日

窯出しの壺にとびつくぼたん雪    (季語/牡丹雪)

白石多重子

 「とびつく」がよい。牡丹雪のそのようすから出来たばかりの壺への期待が高まる。わくわくしながらの窯出しだ。
 今日の句は句集『釉』(朝日新聞社)から引いた。作者は1941年に愛媛県に生まれた人。山崎ひさをに師事している。長く陶芸に打ち込んでいるらしく、そのことに関わる句が多いが、句集の大きな特色はもっぱら幸福感が詠まれていること。概して俳人たちは幸福よりも不幸を詠む傾向がある。だが、幸せを幸せそのままにのびやかに詠むことも大事であろう。「春雷や仮縫ひ服にピンを打ち」「それぞれに日焼けて戻り夫婦なる」「乾きつつ緊まる大壺桜東風」「薔薇湯してをり人間を休みをり」。これらが幸せを核にした多重子の秀句だ。

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