この一句・2006
2006年3月3日

まっすぐに針魚過ぎゆく誕生日    (季語/針魚)

野間口千賀

 「針魚(さより)」は早春の産卵期に河口近くにやってくる。気品のあるスマートな魚だ。その針魚が体内をすぎてゆくという誕生日の感覚がすてきだ。誕生の日の純な感じを針魚が示しているのだろう。
 今日の句は句集『黒揚羽』(ジャプラン)から引いた。作者は1922年生まれ。穴井太の「天籟通信」で活躍した。現在は鹿児島にあって俳句雑誌「天街」の代表である。「立ったまま夢みる犀と葉鶏頭」「空が何か言ってきた雪が肩に」「そっと歩けあたまに朴の花咲きそう」「失恋やほうれんそうをよく茹でよ」「遠雷を胸にかかえる花樗」などが彼女の句集の秀作だ。


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