この一句・2006
2006年12月17日

水洟や詠む本のまだ二頁目    (季語/水洟)

茂木綾子

 つーっと出る水洟。本人の意思とはかかわりなしに出るので困る。確かに読書を始めると2頁目くらいで出ることが多い。読書に熱中して涙腺ならぬ鼻腺が緩むのであろうか。
 この句の作者は明治40(1907)年生まれ。当年99歳である。句集『迦稜頻伽』(2006年9月、富士見書房)から引いたが、「風邪熱の少し消火器赤すぎる」「寄せ鍋や一家と言へど三人よ」「埋火や同級生はみな逝きぬ」「山笑うなかなか開かぬお菓子箱」など、おやっと思う句が多い。「茶の花や一寸お洒落をして墓へ」だと、こういうお洒落もあるのだなあ、と思うし、「煮凝の目玉つつきてまだ元気」だと、なんだかすさまじい人間力を感じる。


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