新季語拾遺・2004
2004年1月18日
トチメンボー(とちめんぼー、tochimenbo)

 トチメンボーを注文すると、ボーイが「メンチボーですか」と聞き返す。「いや、トチメンボー2人前」と押し通す。料理人と相談したボーイは、「少々時間がかかります」と言う。「正月で暇だから待つよ」と応じると、ボーイは再び相談し、「材料がないので今日はできない」と断る。客が「材料は何かね」と問うと、ボーイは「へへへッ」と笑うばかり。
 以上は漱石の『吾輩は猫である』の話。正月のごちそうが続いたので、私などもトチメンボーなんどが食べたい気分だ。
 トチメンボーは実は子規門の俳人、安藤橡面坊。明治30年に大阪毎日新聞社(本紙の前身)に入社、大正3年に死去するまでに主に校正係として働き、また俳人としても活躍した。温和な句風で「鴨川は千鳥に交じる落ち葉かな」などがある。  
(毎日新聞・新季語拾遺/1999年1月18日)
(坪内稔典)

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