季節の窓
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No.1

 日 時:平成26年5月31日(日)〜6月1日


 吟行地: 奈良県天川村


 天川吟行:
俳句(船団)
俳句(幻俳句会)
吟行記(船団・長谷川博記)


天川吟行句(船団)
草と木をみとれていたい河鹿鳴く尾崎 淳子
山滴る頭上注意の岩くぐり
  〃
美女拒む女人結界門薄暑   〃
  
占って鮎の焼きたてうらおもて蔵前 幸子
仏像のようにととのう空木花   〃
鈴蘭の鈴鳴りやまぬ天川村   〃
  
巨岩ゴロゴロラムネ色して夏の川長谷川 博
青葉して三度つまずく杣の道   〃
ワンパクがつり橋揺らす柿若葉   〃
  
どこまでも水音どこからか郭公藪ノ内君代
滴りと吊り橋とまた滴りと   〃
六月の木の下で飲むごろごろ水   〃
  
郭公の鳴いて渓谷よく晴れて鶴濱 節子
ブルーヘイズ女人禁制結界門  〃
かぶりつくアマゴの味と万緑と  〃
  
木洩れ日の蚯蚓になったわたしたち陽山 道子
青山河女人結界門仁王立ち  〃
馴れ初めはいわず天川九輪草  〃
  
万緑の中や割り箸はんぶんこ中原 幸子
夏の藤にんげんひとり立っている  〃
うしろから木洩れ日だねと声みどり  〃
  
滝壷は時間が水になるところ坪内 稔典
水源の栃は大木花が立つ  〃
ややに老い青葉の谷に降ろす腰  〃
  

天川吟行句(幻俳句会)

蝸牛首を出すから叱られる西谷 剛周
錫杖をタオルで拭う河鹿宿  〃
あれ郭公ほれ郭公と人の妻  〃
  
一斉に買う煮こんにゃくに震えかな江崎 弘子
谷風に吹かれ緑に溺れてる  〃
広橋峠虻峠も新樹です  〃
  
蝸牛露伴気分で迷路行く小川かえい
夏来たる電波に乗った豆腐あり  〃
橋上で頬なでてゆく緑風  〃
  
天川村役場廊下の青葉光高木 泰夫
萬緑や陀羅尼助売る赤のれん  〃
夏蝶もわたしもごろごろ水飲みに  〃
  
滴りを背筋伸ばして顔で受く寺町 容子
グーパーの俳句相撲を緑陰で  〃
河鹿笛丑三つ時の目覚めゐて  〃
  
大岩の好きな顔しる蝮草内藤 祐
シャンプーとリンスが語る麦の秋  〃
ポンと折るいたどり山をひとりじめ  〃
  
渓谷よじ上るふと蝶の気分中谷 貞代
虎杖の青い記憶を噛んでいる  〃
歩がゆるむ河鹿の笛と走り根と  〃
  
水落ちて水へこみいる滝の音西谷 稔子
滴りの水こぼしつつ無欲なり  〃
渡り来てかりがね橋や落し文  〃
  
渓谷の終点で河鹿になっていた前田ゆきお
明易し行者になっている雑魚寝  〃
天川村トッキョキョカキョク営林局  〃
  
俳談佳境河鹿は恋を鳴く松本ふみ子
九輪草森の小人の観覧車  〃
鳴き尽す河鹿の恋はクレイジー  〃
  
大峰の女人結界聖五月三木ひろし
杖コッコッ初夏の吊橋渡り切る  〃
五月晴こんにゃくピリリ鳶ヒョロロ  〃
  
山女房あまご三匹地酒酌む村上 和巳
夏山キラキラ吊り橋クラクラ  〃
川ザアザアにゅっと立ちたる蝮草  〃
  
川魚センター座せば涼風後から村上 春美
洞窟冷ゆぽぽ先生に燈よ届け  〃
若葉照り女人結界門赤し  〃
  
たっぷりの余生を遊ぶかたつむり宮武 孝幸
大峰の天辺懸けたかほととぎす  〃
九輪草妖しき色の片想い  〃
  
万緑や女人禁止と言ふ分かれ宮武 悦子
吊橋の向こうで老鴬待っている  〃
串の鮎百匹並ぶ杉木立  〃
  

天川吟行記 (船団・長谷川博)

 船団編集部と幻俳句会が五月三十一日から一泊二日で奈良県天川村へ合同吟行をすることになった。
 午前九時三十分、快晴。最終集合場所の奈良法隆寺駅に船団十人、幻十五人が揃い、マイクロバスでいざ天川村へ。途中、黒滝道の駅ではピリ辛菎蒻が人気。正午前、みたらい渓谷に到着。
 

 「行者弁当」を頂き、足に自信のある人限定で、観音峰登山口まで一・八キロのハイキング。皆さん健脚で、多くの方が参加。みたらい渓谷からの遊歩道はほとんどが上り坂。黙々と足を進める道脇には二人静や蝮草などが自生し、道に沿って流れる渓流には、白い粉が吹いたような巨岩石がごろごろしている。その岩間を勢いよく流れる水は耳に染み入るような音を立て、時には滝に、時には深く静かにエメラルド色になって漂っていた。
 

   観音峰登山口到着後、洞川温泉までの二キロを、健脚組は引き続き歩くことに。杉の原生林の中に続く道は、見知らぬ野草も生い茂り、どこかで郭公が鳴いている。洞川温泉でバス組と合流。そのまま今宵の宿である「西儀旅館」へ。
 午後四時半、いよいよ句会。大広間に二十五人が揃う。司会は西谷剛周・幻俳句会主宰、披講は幻の村上和巳さん。三句投句の五句選。稔典さんと西谷主宰は十句選。句会は幻方式で、選ばれた句が読み上げられ、その都度その句の作者が大きな声で自分の名前を言う。今回、特に人気のあった句は、次の二句。

  どこまでも水音どこからか郭公    藪ノ内君代
  渓谷の終点で河鹿になっていた   前田ゆきお


 この二句については、稔典さんと西谷主宰の選が重なる好評句でもあった。西谷主宰は主に今日の吟行の中で自然に作られた句。稔典さんはなるべく取り合わせを用いた句を選ぶようにされたようで、唯一の取り合わせの目玉のピリ辛菎蒻を食べなかったことを悔やまれていた。最後は一人ずつ自己紹介をして閉会。句会後の夕食は親睦を深めるために誕生日順に座ることになり、わいわいがやがや。座る前にすでに親睦は始まっていた。川魚の造りや鹿の肉、名水で作られた豆腐など、天川村ならではの料理がぞくぞくと運ばれ、ビールに酒と大満足。宴会が終わる頃には、裏を流れる川に河鹿の鳴く声が目立つようになり、天川村の漆黒の闇が広がっていくようだった。
 翌日も快晴。朝六時、冷たく透き通った空気の中を龍泉寺で行われる護摩焚きを皆で見に行く。法螺貝が鳴らされ、護摩木が焚かれ、高々と上がる炎の中、般若心経を唱えて無病息災を祈願する姿は敬虔なものに映った。
 九時前、マイクロバスで宿を出発。途中「ごろごろ水」をペットボトルに詰め、「女人結界門」で集合写真を撮る。次に九輪草の自生する道を抜けて蝙蝠の岩屋、蟷螂の岩屋を探索。昼食場所の洞川川魚センター到着後、温泉街が一望できる吊橋(かりがね橋)まで山道を往復。その後、昼食までの時間を稔典さんの提案で一句投句、句相撲となった。最後まで勝ち残ったのは次の句。

  夏山キラキラ吊り橋クラクラ   村上和巳

 昼食は鮎、アマゴの炭火焼きなど。幻の中谷さんのご好意で山菜の天ぷらも頂く。
 後は天河大弁財天に寄り帰途へ。
 自然に抱かれ心地よい、あっという間の二日間。
 お世話頂いた西谷主宰をはじめ、幻の皆さん、ありがとうございました。


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