季節の窓
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No.5
2015年 船団の会初夏の集い in 静岡
 富士の裾野で 詠む考える


  5月30日(土)
シンポジウム 第1部 : 「出版から見た俳句」
   〃      第2部 : 「私の俳句的課題」
懇 親 会 : 船団賞発表など


  5月31日(日)
句会ライブ in 静岡 : 「富士を詠む」



5月30日(土)13:30〜15:00 於・グランシップ

シンポジウム 第1部 出版から見える俳句

(レポート・高田留美/フォト・おおさわほてる、渡部ひとみ


 シンポジウム会場の正面には大きな窓。うっすらと空に浮かぶ富士山が、私たちを出迎えてくれました。しかも、前座として出てきて、主役登場のころにはそっと隠れるという奥ゆかしさはどうでしょう。あまりにも儚い出会いに「また来るよ」と誓わされてしまった人も少なくないはずです。


 左から、坪内稔典(船団代表・司会)、池田澄子(船団)、山岡喜美子(ふらんす堂)、鈴木忍(「角川 俳句」元編集長)、池永由美子(本阿弥書店)の皆さん。


 ふらんす堂を興された山岡さんからは、本への熱い思いと、装丁に関わる職人さんの話を、

 多くの結社を見てこられた「俳句」元編集長の鈴木さんからは俳壇の話を、

 『関西俳句なう』を担当された本阿弥書店の池永さんからはそのご苦労と達成感と喜びを、
 こもごも、お聞きすることができました。


 電子書籍という媒体が登場したことによる出版業界の動向も話題に上りましたが、俳句と関わってこられた編集者たちの溢れんばかりの思いと、製本に関わる方々の手仕事の存在を知り、当たり前かもしれませんが、句集はひとりではできないのだと改めて思いました。
   句会がそうであるように出版にも、ひとりでは完結しない面白さがあるのかもしれません。


5月30日(土) 15:15〜16:30 於・グランシップ

シンポジウム 第2部 私の俳句的課題

(レポート・高田留美/フォト・おおさわほてる


 芳野ヒロユキさんの進行で、若手のみなさんの俳句的課題が明らかに…!?


 左から、芳野ヒロユキ(進行)、山本たくや藤田俊紀本直美静誠司久留島元のみなさん。
 若くして「独自の俳句」を確立されている方ばかりですが、その秘密は明かしてもらえるのでしょうか?

 このディスカッションでは「俳句を壊す」というフレーズを何度も聞きました。 船団104号の特集のテーマでもありましたね。



 ふむふむ。ひとくちに「壊す」といっても色々な意味があるようです。みなさんの話を聞いていると、「現状打破」「日常からの脱却」「自分らしさを捨てる」「ステップアップ」など、個人個人が思い描く「壊す」のイメージはかなり違っていて、しかも広範囲。 一つ共通点があるとしたら、それは、壊しっぱなしではないということでしょうか。 (実は少しほっとしました。作り方もできた俳句もそれぞれ違うのに、壊し方が同じだったら気持ち悪いです。)



 解体から再構築へ。その先の何かに出会うために壊す。これなら作句歴の浅い私にも理解できそうです。でも、壊すためには壊せる何かを作らなくてはならないのでしょうか?焦ります。悶々とします。みなさんが作るために壊そうとしている話を聞いて、壊すために作ろうとしてしまうなんて、冷静に考えるとおかしな話ですね。
 かくして「ひとまず、私は壊さなくていいや。壊せるものもないし。作ろう。とにかく作ろう!」と思ったのでした。


 司会の木村和也さん、お疲れさまでした。


5月30日(土) 18:00〜20:00 於・静岡グランドホテル中島屋

懇 親 会

(レポート・高田留美/フォト・おおさわほてる


 さて、会場が変わりまして……、カピバラの登場か!?


 まずは、ねんてんさんの挨拶。
  

 俳句を通してお名前だけ知っているあの方、この方にやっとお会いできました。アルコールが入るとどんどん盛り上がります。みなさん、年齢も性別も関係なく、話に花を咲かせています。



 そして、いよいよ第七回 船団賞の発表です。

 船団賞は秋月祐一さん。1月に俳句を始め、3月に入会するのとほぼ同時に出した20句で船団賞を獲得されました。
  

 この快挙に、賞賛と羨望の眼差しが向けられたのは言うまでもありません。秋月さんは『迷子のカピバラ』という歌集を出されているそうなので、こちらも是非、読んでみなくては。
 歌人でもある秋月さんしかり、詩人でもあり小説家でもあるねじめさんしかり、ことばと格闘している…。その毎日から生まれた俳句は、自ずから輝くのでしょう。
 ところで、秋月さんがカピバラに見えたのは私だけでしょうか?お酒が見せた幻でしょうか?いえ、それだけではないような…。

 楽しい時間は、あっという間に過ぎて行きました。
 これからも、ねんてん代表が熱く語る「異なる個性がぶつかり合いお互いを高めていく場」を築き、たくさんの仲間と分かち合えたら幸せです。


5月31日(日) 9:30〜11:30 於・静岡グランドホテル中島屋

句 会 ラ イ ブ

(レポート・早瀬淳一/フォト・おおさわほてる



 選者陣は左から、武馬久仁裕東英幸小西昭夫岡本亜蘇のみなさん。武馬さんは岐阜県、東、小西、岡本さんは愛媛県からの渋いおじさま軍団です。

 まず話題になったのは、会場最高点(7点)句の、

 初夏である富士山である僕である

に、選者からは1点も入らなかったので、その理由が尋ねられました。概ね、「である」の繰り返しが安易、「僕である」は他のものの方がいい、といった説明でした。会場からは、「である」の3回のリフレインが斬新、初夏の弾む感じが出ている、「僕である」が意外性があっていい、と肯定的な意見が相次ぎました。
 すると、坪内代表から「これだけ会場から肯定的な熱い意見が多いのだから、選者陣はダメな理由をはっきりさせる責任があるのでは?」と発言があり、会場の空気感が変わりました。



 それから10分近く、双方一歩も引かず、真剣な議論が続きました。たった17音の詩の評価を巡って、これだけ熱く語るというのは、俳句をしていない人から見ると不思議な光景に見えるかもしれませんが、これこそが俳句の醍醐味なのだなと思って聴いていました。作者は岡清秀さんでした。  その他の会場の人気句は以下の通りです。

会場人気句
 初夏である富士山である僕である岡 清秀
 夏の富士アイロンがけの好きな人川島由紀子
 バナナ食う富士山はまだ見てないが小倉 喜郎
 麦秋の男ころがし仰ぐ富士鶴濱 節子
 全開にせよ富士山へ六月へ藤井なお子
 鉛筆を削ろう富士山に南風        小西 雅子

 次に、選者入選句の選評に入りました。選者選の俳句は以下の通りです。
 ◎は特選です。は会場でも人気のあった句です。

武馬久仁裕選
◎富士山がいっぱい六月の砂場原 ゆき
 炎昼の玄関脇に富士真奈美赤石 忍
 ソーダ水ふりかけしゅわしゅわ富士燃える井上 曜子
 見渡せばwar war war war 富士いななく  甲斐 一敏
 富士と出会うボロアパートの階段で     水木 ユヤ

東 英幸選
◎汗ばめる乳房二つ富士一つ中井 保江
☆夏の富士アイロンがけの好きな人川島由紀子
☆全開にせよ富士山へ六月へ藤井なお子
 背景は富士なり夏の家族なり河野けいこ
 富士山の影を揺すりて田植唄  諸星 千綾

小西昭夫選
◎富士山を毀すつもりの蟻の列赤坂 恒子
 暑気払い海鮮丼の天こ盛り星河ひかる
 汗ばめる乳房二つ富士一つ中井 保江
 富士山に突きささってる夏大根小倉 喜郎
 月下美人富士山ほどの嘘をつくらふあざみ

岡本亜蘇選
◎富士は雲我は窪みにいる薄暑中居 由美
 壊す富士壊された富士詠んで夏衛藤 夏子
 富士と出会うボロアパートの階段で     水木 ユヤ
 富士山を毀すつもりの蟻の列赤坂 恒子
 富士山に突きささってる夏大根小倉 喜郎

 次に、各賞が手渡され、拍手歓声に包まれました。
 ソフィスティケートされた滝浪貴史さん、笑みを絶やさない三宅やよいさんの司会によって、会場に爽やかな風が吹いているようでした。



 最後に、総合司会の岡清秀さんによる締めの言葉でお開きとなり、各人来夏の再会を約し、解散となりました。



 静岡の(右から)芳野ヒロユキさん、後藤雅文さん、静誠司さん、行き届いたお世話、有難うございました。



 そして岡清秀さん、会場トップ賞、おめでとうございました!

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