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言葉を探る−バックナンバー
月刊「e船団」 「香りとことば」2017年3月号

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独活(うど)

 また山菜だけど、いいのかなあ、と迷っていましたら、こんな都々逸があるとか。(1)

 山でうんまいもんオケラにトトキ、
 まだうんまいもんウド、ワラビ


それに、毎日歌壇の「加藤治郎・選」にこんな短歌。

 肯定も否定も疑問も感嘆もなきゆうぐれの棒となりおり(垂水市 岩元秀人)

 「も」でたたみかけたこの四語、絶妙ですよね。スーパーで買って、写真を撮ったりしていたウドに「ボクでいいよ」と言ってもらったような気がしました。

 1月に買ったのは(↓)、ホントに棒みたいだったのですが、

2月には葉っぱが大分大きくなっていました。うつむいてますけど。

 長さは大体同じ、約50センチでした。
 産地が、1月のは秋田県、「世界遺産の白神山麓からの贈り物」。2月のは群馬県産。袋にはこんな(↓)レシピが付いています。値段は1月が580円、2月は398円でした。

 葉は天ぷらに、皮はきんぴらに、身は鶏肉と取り合わせて和え物に。全部やってみるのは大変なので、ごっちゃまぜできんぴらにしてみました。セロリのきんぴらが大好きなので、これもいいのでは、と思ったのですが、大正解。
 不思議に思われるでしょうね。私が、今ごろ、ウド初心者なんて。実は、ずっと、香りの強い野菜、果物、全部ダメだったのに、このところ、そう、後期高齢者になった頃からでしょうか、何でもOK、おいしい、おいしい! ついでにコーヒーもOK。付き合いで仕方なく飲んだ3時のコーヒーで眠れなかったのがウソみたい。

 また脱線してますね。
 きんぴらは美味しかったです。葉、皮、身、それぞれが、香りも、歯ざわりも、味も、ちゃんと個性を発揮しつつ、でも、微妙に調和がとれてて。ホント、おすすめのものぐさ逸品です。
 で、その香りですが、『食べ物 香り百科事典』(2)に、なんと60以上もの香り成分が載っていて、ウドの特徴的な香りのモトは、α-ピネン、カンフェン、リモネンなどの炭化水素類、ボルネオール、(Z)-3-ヘキセノール、4-テルピネオールなどのアルコール類、それに、フェニルアセトアルデヒド、カンファー、カルボンなどのカルボニル化合物だろうと書かれています。
 でも、こういうの、いろんな植物に含まれていて、特にウドにだけ含まれている成分というのは見当たらないな、と思ったり、待て待て、同じ成分でも、比率が違えば香りががらっと変わるよ、と思ったり。

 ところで、独活という漢字、ビックリですよね。ひとりでいきる!?
 これ、どこから来たんだろう、と、日本国語大辞典を引いてみると、
うど 【独活】〔名〕
(古くは「うと」か)
ウコギ科の多年草。北海道から九州の山野に自生するほか栽培もされる。地上に出る前の若い芽は柔らかく芳香があり、食用とされるが、生長すると高さ2メートルに達し、食用とならない。高さ1〜2メートル、葉は卵形で鋸歯(きょし)のある小葉からなる大形の二回羽状複葉。夏、雄花と雌花の別がある薄緑色の小さな五弁の花が球形に集まって咲く。果実は滑らかな小球形で、紫黒色に熟す。漢名として土当帰(どとうき)を慣用したが誤用。学名はAralia cordata 《季・春》 ▼うどの花《季・夏》


と植物の説明があって、語源説として、
(1)ウヅ(埋)の転〔名言通・大言海〕。
(2)ウド(埋所)の義〔本朝辞源=宇田甘冥〕。
(3)ウはウツボ、トは土から〔和句解〕。
(4)ウはウバラのウと同じ。トはトゲの下略。茎に毛刺が多いことから生じた語か〔古今要覧稿〕。
(5)ウゴクの転語。風のないのに動くところから中国で「活」をあてたという〔滑稽雑談・たべもの語源抄=坂部甲次郎〕。


 この(5)が、やや「独活」につながるかな、という感じもしますが、これでは、が宙に浮きますよね。
 ところが、日本国語大辞典では、うど【独活】のほかに、どっかつ【独活】が立項されています。そこには、
どっ‐かつ[ドククヮツ] 【独活】〔名〕
薬用とするシシウドの根の称。強い芳香があり、漢方では、煎じて神経痛や風邪などの薬に用いる。


とあって、その語源説のところに「叢生せず、一本だけ生えるところから〔古今要覧稿〕」と書かれています。
 私の独断と偏見では、シシウドという名前のなかにウドがあるから、名前を拝借した、と考えると理屈にあうような気がするのですが、無理でしょうか?

 実は、シシウドもウドもレッキとした漢方薬なんですね。で、名前が似てるもので、こんがらがってしまうのですが、富山大学の客員教授、佐竹元吉氏の論文(3)を引用させていただいて、そこのところをはっきりさせておきたいと思います。

 独活は同じ生薬名で複数の基原植物が記載されている。第15改正日本薬局方第一追補に初めて収載され,基原植物はシシウド Angelica pubescens とウド Aralia cordata の 2 種類であるが,中国ではシシウドAngelica pubescens のみである。和独活(ウドの根茎)と唐独活 (シシウドの地下部)は類似した匂いはあるが、両者ではかなり成分が異なる。ウコギ科ウドの成分はピネンなどのテルペン系精油、さらにジテルペン、トリテルペン、トリテルペン・サポニンなどテルペン系の化合物でしめられている。セリ科のシシウドの成分はセリ科に共通するクマリン類やフタライド類である。

 では、独活の俳句を……、
 雪間より薄紫の芽独活哉   芭蕉
 独活掘りの下り来て時刻をたづねけり  前田普羅
 山独活がいつぽん笊にあるけしき  中原道夫
 独活刻む切つ先ときに吾に向き  大竹多可志
 独活売に花咲く頃を誓ひけり  闌更

 お、闌更さん、やりますね! ではまた来月。(中原幸子)

【参考文献】

(1)八田洋章「週刊朝日百科 世界の植物 29」(朝日新聞社、1994年)
(2)日本香料協会編『[食べ物]香り百科事典』(朝倉書店、2006年)
(3)佐竹元吉著「日本薬局方と収載生薬」(富山大学・和漢医薬学総合研究所)


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