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言葉を探る−バックナンバー
月刊「e船団」 「香りとことば」2018年9月号

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ゴマ(胡麻・ごま)はすごい

 この夏、いちばんうれしかったのは理稀クンが無事に見つかったこと。
 この夏、思わずアハハと笑ってしまったのは、

  ごま油を買って宝塚を観よう

 という広告。
 ごま油と宝塚! なんという取り合わせ!
 家に帰ってネットで検索してみたら、ちゃんと出てました。広告主はかどや

 すごい、こんな取り合わせを思いつくなんて。新しく開発したごま油への自信と愛情があふれてる、というか。

 実は『ゴマの来た道』(1)というとてつもない本に出合ったのですが、ここにはゴマの辿った遠く果てしない旅が書かれ、「開けゴマ」のゴマはどんなゴマだったかはもちろん、「閉じよゴマ」の発見まで書かれています。
詳しくはご自分でお読みいただくとして、宝塚へ戻りましょう。

 で、そのごま油ですが、新発売は下の画像の右端の「純正ごま油濃口」なんですが、左側の以前からある2種もキャンペーンの対象になっていて、右下のところに応募シールが貼られています。近所のスーパーではまだ真ん中のしか置いてなくて、200mlの壜が381円+税でした。

 まあ、こう見てくれば、なぜあんなに笑えたのか……身も蓋もない言い方をすれば、製造元のかどや製油が「純正ごま油濃口」の発売記念に、「ごま油を買って宝塚を観よう」というキャンペーンを打っているだけのことで。
 だけど、招待する人数が「2142組4284名様」とか、まあ、劇場の席の数に合わせただけかも知れませんけど、何ともハンパで、おかしいですよね。
応募締め切りは2018年12月16日ですから、皆さんも運試しをされてはいかがですか?

 それにしても、何だかだとお世話になっていながら、ゴマのこと、知らないなあ、と思い、ついでにそのスーパーで売っていたゴマ関係の商品を買って来ました。
 白ゴマ系と、

黒ゴマ系

 黒ゴマは一種類しかなかったので、すりゴマとならべてみました。
 フツーの白ゴマと金ゴマは、クイズが成り立つかな、と思って、こんな風に並べてみたのですが、

 ご覧のようにあまりにもハッキリしていて、クイズにはなりませんでした。もちろん、右が金ゴマです。
 きんごま(金胡麻)というのは日本国語大辞典にもちゃんと出ていて、「あぶらごま(油胡麻)の異名」とあり、そのあぶらごま(油胡麻)は「ゴマの品種のうち種子の色が淡黄色のもの。きんごま」となっている。出典が〔重訂本草綱目啓蒙(1847)〕だそうですから、安政5年(1858)創業のかどやさんの命名ではないようですが。それとも、一枚噛んでおられた可能性も否定できない?
 当然、「胡麻(ごま)」も出ていて、秋の季語、とあり、「ごまの花」は夏の季語で続日本後紀の承和7年(840)五月のところに出ている、とあるから、少なくとも9世紀には日本に入ってきていたことになります。

 で、商品名で一目瞭然ですが、どのゴマも煎られています。
 白ゴマ系の左から、

 株式会社栃ぎ屋M(兵庫県) 白 いりごま
  キャッチフレーズ:味と香りの演出に
 株式会社真誠ST(愛知県) いりごま 煎りたて一番
  キャッチフレーズ:いりたての風味が生きています。香ばしさ、いちばんです。
 カタギ食品株式会社(大阪府) いりごま こんがり金ごま
  キャッチフレーズ:味本位 黄金色で歯応えよく香ばしさがひときわ優れた「金ごま」を使用しています。

 黒ゴマ系も左から、

 株式会社真誠ST(愛知県) いりごま 煎りたて一番 
  キャッチフレーズ:いりたての風味が生きています。香ばしさ、いちばんです。
 株式会社シジシージャパンAM32(東京都) すりごま 黒
  キャッチフレーズ:甘みを引き出す しっとり仕上げ。しっとりとしたすりごまと香ばしい粒の食感。
 
 え? すりゴマって、わざと粒を残してるの?
 写真の右側がすりごまなんですが、粒が残ってるかどうかははっきりしませんよね? でも、口に入れると、ときどき粒が歯に当って、あ、噛んだ、という感じがします。

 はい、どれも、ひとつまみ、口に入れて味わってみました、もちろん。
 香りがいちばん高いのは、何と言っても金ゴマでした。ただ、それぞれの違いは微妙で、とても言葉で正確にお伝え出来なくて、残念!

 いつものこととはいえ、どうということもないことを羅列してきましたが、あれやこれやとゴマのことを読んでいると、いろいろ「えっ!」、「わっ!」ということに出合いました。
 いちばん驚いたのは「ゴマ1粒と牛1頭の交換」という記事でした。(2)
 「ゴマの発祥地はアフリカのサバンナである」ということがまずあって、

 ゴマが陸路で最初に導入されたのは古代エジプトである。この導入のきっかけとなったのは、サバナ農民のゴマ1粒と、エジプト商人の牛1頭との交換だったという。この商談は、農民は牛の畜力を利用して所得を増大させることを考え、商人はゴマの香味に魅せられ、1粒播いても5万と実るのだからという計算から成立した。

 と、いうんですけどね。
 どっちが儲けたのでしょうね?

 こんなにすぐれもののゴマなのに、「ごまかす」、「ごまをする」、「ごまのはえ」など、いやな言葉がいくつもあるのも不思議です。
 これからどんな迷路が待っているか、どうぞお楽しみに。ではまた、来月。(中原幸子)

【参考文献】

(1)小林貞作著『ゴマの来た道』(岩波新書、黄版354、1986年初版、2007年第7刷)
(2)小林貞作著「ゴマ1粒と牛1頭の交換」(週刊「朝日百科」17号、朝日新聞社、1994年)


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