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言葉を探る−バックナンバー
月刊「e船団」 「香りとことば」2018年8月号

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そのコーヒー、何度ですか?

 思いっ切り、抜かってしまいました、先月は。
 設問がアサッテ向いてる、というか。
 モンダイの句は、

 ごくりっとコーヒー一杯梅雨に入る

 でした。
 坪内稔典さんが、このe船団の「今日の一句」で、7月24日に、
コーヒーをごくりっと飲みますかね、と言ったのは私である。私の語感では、ごくりっと喉を鳴らして飲むのは生ジュースとか冷たい水、あるいは生ビール。コーヒーは熱いし、まず口中で香りや味を楽しみ、それから飲みこむ。すぐには喉に行かないのだ。もちろん、熱いコーヒーの話、冷やしたコーヒーは私にはコーヒーではない。

 と名乗りをあげ、 更に翌25日に、
 冷たいコーヒーならともかく、淹れたばかりのコーヒーはまず口中で楽しみたい。だから、「ごくりっとコーヒー一杯梅雨に入る」のコーヒーはコーヒーらしくなく、私にとってはなんともまずそうなコーヒーだ。

 と。
 ぎゃふん。
 更にこの俳句の作者Nさんが、メールで、
 24日、25日の「今日の一句」、「ごくりっと」はまずいコーヒーとのコメント面白く読みました。清水の舞台に立った気持ちで入ったコーヒーショップで不安なまま気がつけば冷めたコーヒーを「がぶり、がぶり」と。(後略)

 もう一度、ぎゃふん。
 な〜んだ、この句のコーヒー、冷めてしまってまずいコーヒーだったのですね!

 とにかく、コーヒーの句を話題にするのに、温度のことを考えにいれないなんて、なんという間抜けでしょう。
 こうなったら、私は、毎朝、どんなコーヒーを飲んでいるのか、調べてみることにしよう。
 と、いう次第で、まずは、ヨドバシ梅田へ出かけて温度計を買ってきました。コレ(↓)です。正式の商品名は「棒状温度計H」(シンワ測定株式会社製)。


 長さ30センチ。215円(税込み)。
 何十年も前に仕事で毎日のようにお世話になっていたのと形もサイズも同じなんですが、やっぱり、進歩してました。まず、ケースが、四角。以前はたしか、六角形だったような。それから、赤い矢印のところに角(つの)のついた小さな輪っかのようなモノが付いています。この2つ、温度計が、実験台の上をコロコロ転がるのを防ぐ工夫でしょう。簡単なアイデアのようなのに、学生時代も、働いていた40年間も、この工夫に出合いませんでした。 計れる温度の上限も、前はたしか100℃までだったと思うのですが、これは105℃まで計れます。

 では、実験です。


 準備はたったこれだけ。
 で、いよいよ温度を計っていくのですが……。

 図の(A)はおなじみのT-falという電気ケトル。これに水を入れ、その水の中に温度計を突っ込み、スイッチ・オン。4分足らずで沸騰して自動的にスイッチ・オフになるんですが、温度計は97度でストップ。なんで??
 そして5分後には、もう90℃になってる。え? こんなに早く下がるの、とビックリ。こんな速さで温度が下がったら、油断もスキもないですよね。ちょっとよそ見をしてる間に、どんどんお湯の温度が下がるなんて、想定外もいいところ。ま、手早くしないといけないことはわかりました。

 取り敢えず、T-falの中のお湯の温度がどんなふうに下がるのかをみておきましょう。こんな具合です。

 97℃ → (約2分) → 95℃ → (約3分) → 90℃

 つまり、沸騰してからたった5分で、コーヒーを淹れる適温とされる90℃になってしまうのですね。それからは、下がり方はややゆっくりになり、さらに5分経つと、84℃ほどになります。

 さて、コーヒー、どうでしょう。
 上の写真の(B)にセットしているのは、この欄の4月号でご紹介した、キーコーヒーのドリップ オンです。あ、底に白っぽく見えるのは牛乳(50ml)です。500Wの電子レンジで1分チンして68℃。

 T-falで沸騰させ、5分ほどたったお湯で、(B)のコーヒーを潤して、20秒蒸らし、お湯を回しかけて、カップに8分目ほど溜まったら出来上がり。このときお湯は86℃、カップにたまったミルクコーヒーは70℃でした。
 ここで(C)を投入。ぶどう糖です。寝ぼけた脳にエネルギーを、というつもりですが、さて?
 これが、その完成品なんですけどね。


 中身がよく見えて、いいかも、と思って、耐熱ガラスのマグカップにしたのですが、残念ながらマズそうな感じですねえ。
 それはともかく、ネットなどで、コーヒーの飲み頃とされている60〜70℃のちょうど上限に出来上がりました。
 まずまずの出来というべきでしょうが、70℃は、私には、あ、熱っ、という温度でした。
 8分後、60℃。これでほぼワタシの適温、という感じでしたが、一番好きな温度は54℃でした。ちょっと猫舌??
 わっ、ぬるぅ、と思ったのは35分後の45℃。それに、ぬるくなると味も苦くなって、もうコーヒーじゃない、ですね。ヒトの体温の37℃になるのは58分後でした。
 Nさんは、きっと、折角のコーヒーに口もつけず、30分も何かに没頭して、ひと口飲んだときにはもうぬる〜くなっていたのでしょう。
 坪内さんがお口の中でころがして香りと味と、あ、温度も(?)楽しまれるのは、きっと68℃くらいじゃないでしょうか?

 なんか、温度を計るだけで、予定の長さを大分オーバーしてしまいました。
 でも、温度を計るって、楽しかったです。一家に一本温度計。
 ごくりっという音は、いつ、どこで、どんな状況で出るのかを調べたかったのですが、それは、また次の機会に。では、また、来月。(中原幸子)



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