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言葉を探る−バックナンバー
月刊「e船団」 「香りとことば」2019年6月号

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梅雨(つゆ)もよう

 奄美が梅雨入りしたもよう、と気象庁が発表したのは5月14日でした。沖縄は5月16日。沖縄の16日は平年より1週間遅い由。ただし、昨年はもっと遅かったので、これでも昨年よりは16日も早いのだとか。

   不思議なのは、気象庁が発表する梅雨入りや梅雨明けの日付には、全部「ごろ」が付いていること。この気象庁のホームページでも、近畿地方の「昭和26年(1951年)以降の梅雨入りと梅雨明け(確定値):近畿」が、(確定値)とあるのに、全部ていねいに「ごろ」がついています。ちょっと2017年と18年のおころを見てみると、

 年       入り      明け    梅雨の時期の降水量の平年比(%)
2017年   6月20日ごろ  7月13日ごろ       81
2018年   6月 5日ごろ  7月 9日ごろ       162
平 年    6月 7日ごろ  7月21日ごろ  


  ね?

沖縄地方の梅雨入りのニュースもこんな具合です。
 今日16日(木)11時、沖縄気象台は、沖縄地方が梅雨入りしたと見られると発表しました。
 平年より7日遅く、昨年よりは16日早い梅雨入りで、今月14日(火)の奄美地方に次ぐ発表となります。

 梅雨入りの予想というのもネットにアップされてますが、ご覧のように一々「」が付いています。まあ、予想なら「」でいいような気も。

(ウエザーニュース〔https://weathernews.jp/s/topics/201905/160055/〕より)

 いま、私が息をしているここが、梅雨かどうか、って、そんなに分かりにくいのでしょうか? 私が子どものころ、つまり昭和20年代ならいざ知らず、今どきどうして「」が外せないのか、すごく不思議!!

 と思って、「梅雨入り、梅雨明けってどうやってきめるの」と、いい加減な質問でググってみたら、こんなピッタリのサイトがありました。
 「アズミちゃんネル」というサイト、こちらです。やりますねえ、アズミちゃん! 
 ホントに面白いです。皆さんも是非訪ねてみてください。
 で、このサイトに紹介されている「梅雨入り」の定義とは、

暫定的な決め方ですが、以下のような定義があると言われています。
 ・晴天が2日以上続いた後、
 ・梅雨前線の影響で、前日と本日が雨で、
 ・さらにその後1週間の天気予報が5日以上雨または曇り。

 そして「梅雨明け」の定義は、
 ・雨が2日以上続いていた後、
 ・梅雨前線が北上して、前日と本日が晴れで、
 ・さらに週間天気予報で5日以上が晴れ(または一部曇り)。


 両方とも「暫定的」という言い訳(失礼!)が付いていますので、念のため。  まあ、これなら「ごろ」が付いて廻るのも仕方ないか、という感じですね。

 ところで、いったい、梅雨って、なんやろ、と、改めて思って、ふと『雨の名前』(1)という本があったのを思い出し、これ(↓)です、



開けてみましたら、「梅雨」のページには、こんなに梅雨がありました。
 青梅雨、暴れ梅雨、蝦夷梅雨、送り梅雨、男梅雨、女梅雨、返り梅雨、空梅雨、走り梅雨、迎え梅雨。

 索引にも「○○梅雨」がたくさん!
 青梅雨、荒梅雨、蝦夷梅雨、送り梅雨、男梅雨、女梅雨、返り梅雨、空梅雨、迎梅雨(げいばいう)、梅雨、菜種梅雨、梅雨(ばいう)、梅雨前線豪雨、走り梅雨、迎え梅雨、陽性梅雨(ようせいばいう)。

 でも、不思議なことに(不思議じゃない?)「梅雨○○」はないんです。
 へーえ、季語はどうやろ、と思って、『図説 角川大歳時記 夏』(2)の索引を見てみました。
 すると、こちらには、「梅雨○○」が、ズラリと並んでいます。
 梅雨あがり、梅雨あがる、梅雨明、梅雨穴、梅雨入、梅雨雷、梅雨菌(つゆきのこ)、梅雨雲、梅雨曇、梅雨寒、梅雨寒し、梅雨じめり、梅雨空、梅雨茸、梅雨出水、梅雨鯰、梅雨に入る、つゆの明、梅雨の雲、梅雨の月、梅雨の蝶、梅雨の後、梅雨の晴、梅雨の星、梅雨の山、梅雨の雷、梅雨はじまる、梅雨の晴、梅雨晴間、梅雨冷めく、梅雨やませ、梅雨闇。

 大分前に正月の句会に「初ネクタイ」の句を出したら、「なんでも『初』をつけたらええというもんじゃない!」と大目玉を食ったことがありましたが、これって、なんか、そんな感じだなあ、などと思って、ふとページの欄を見ると、
「梅雨」は天文、「梅雨あがる」は時候、ここまではわかるけど、「梅雨穴」は地理だとある。これって何? と思えば、なんと、こんな解説が。

 梅雨期、降り続く雨のため、湿潤の地または地盤のゆるい地に思わぬ陥没を生じ、そこから水が湧出したりすることをいう。山崩れや洪水と共に梅雨の災害の一つである。

 「梅雨」って一筋縄ではいかないだろうな、とは予想してましたが、この気象用語の「梅雨」と俳句の季語としての「梅雨」の守備範囲の違い方って、ハンパないですね。  思っていたより何倍も込み入った「梅雨もよう」。来月は「梅雨明け」の月ですから、頑張って面白いことをご報告したいと思います。では、また来月。(中原幸子)

【参考文献】

(1)高橋順子・文、佐藤秀明・写真『雨の名前』(小学館、2001年初版)
(2)角川書店編『図説 俳句大歳時記』(夏)(角川書店、1973年初版)



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