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言葉を探る−バックナンバー
月刊「e船団」 「香りとことば」2018年5月号

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バリスタ騒動(ばりすたそうどう)

バリスタ、買いました。


 フルネームは「ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ」、型名は「HPM9631−PR」。品名というのかな、「電気コーヒー沸器」と書かれています。なんか、明治のころの名前みたいですよね? 京都のヨドバシで、5230円(税込み)。
 高さ36センチ、重さ3.6キロ。

 いきなり白状しますが、何か新しいものを買ったとき、トリセツを読まずに試してみようとするのが私の悪いクセで、今回も「まず、洗わないと」と思ってバラバラにしたのがウンのつき。
 部品が多すぎる! もとに戻せない!
 慌ててトリセツを開く。
 

 これが、なんと、全42ページ。「3.1. 洗浄とお手入れ」だけで8ページもある。
 自分で蒔いた種とは言え、刈るのが大変で、ひと騒動してしまいました。
 せめて、この(↓)内部の構造だけでも先に見ていれば、こんなことにはならなかったのに、と思っても、後のまつり。

 

 コードにちょっとやそっとでは外せない小さなカミ(↓)がくっついていて、「取扱説明書を見てね」と書いてある、ひと騒動の後で見ると目にしみる。
 

そんなこんなで半日かかって、やっと出来上がった、記念すべき最初の1杯がこれ(↓)です。
 

 なんか、ちょっと濁っているように見えますよね? これは、失敗作なんじゃないか、とは思いましたが、取り敢えず賞味(!)してみました。
 あ、今度はゴールドブレンド、コレ(↓)です。近所のスーパーで、65グラム(32杯分)入りが498円+税。

 

 で、味と香りですが、なるほど、自慢するだけのことはあるなあ、というのが、率直な感想でした。
 香りは先月も申しましたが、最初に立ち昇るかろやかで、しかもちょっと湿り気のあるフルーティーっぽい感じが心地よく、味は酸味と苦味のバランスがよくて、とくに、酸味が存在感があるのに出しゃばらない感じで、ホント、いいフレーバーです。

 取扱説明書には、どうしてこのようなコーヒーを作ることができるのかが書かれています。
 レギュラーソリュブルコーヒーと名付けられたこのコーヒー、こんな感じなんですけどね、

レギュラーソリュブルコーヒーとは
レギュラーソリュブルコーヒーとは、丁寧に微粉砕した焙煎珈琲豆をネスレ独自のコーヒー抽出液と混ぜ合わせて乾燥し、ソリュブルコーヒーの粉の中に封じ込めるという画期的な「挽き豆包み製法」を採用したコーヒーです。
コーヒー豆を丁寧に焙煎し、その豆を細かく粉砕、ネスレ独自の抽出液で大切に包み込むことで、豆の酸化の原因となる空気との接触を抑え、いつでも手軽に淹れたての香りとコーヒー本来の味わいを一杯ずつお楽しみいただけます。
本書では「レギュラーソリュブルコーヒー」を「コーヒーパウダー」と表記しています。


 「ソリュブル」って、「可溶性の」という意味ですよね? 普通、透明に溶けることをいうと思うのですが、このコーヒーは、やってみたのですが、透明には溶けません。まあ、限りなく透明に近い、というところでしょうか。
 それはともかく、このまま嗅いでみると、先月ご紹介した「香味焙煎―コスタリカブレンド」よりちょっと甘くて重めだけれど、いいトップノートが発ってきます。 舐めてみると、香ばしくて苦く、酸味は、不思議なことに感じません。
 コーヒーの苦味と言えばまずカフェインを思い出しますが、『コーヒーの科学』(1)という本によれば、カフェインは苦味の1〜3割を担っているだけで、他にも苦味にかかわる成分がわんさと入っているのだとか。そして、いちばんコーヒーらしい苦味の成分はコーヒー豆に含まれているクロロゲン酸とカフェー酸というモノが焙煎されたときにできる、クロロゲン酸ラクトン類ビニルカテコール・オリゴマー」の2つのグループの化合物たちであることがわかったのだそうです。

 そして、苦味で驚いてはいけなかったのです。最新の分析機器で分析した結果、香りの成分はなんと約1000種類も分っていて、『Coffee Flavor Chemistry』(2)という本まで出ているのですね。
 もっとも、どの1杯のコーヒーからも1000種類の香り成分が立ち昇るわけではなく、300種くらいだそうですが。
 で、1000種類の中でもっとも「コーヒーらしい香り」に寄与している成分が2−フルフリルチオールという物質だ、とのこと。

 あ、酸味がまだでしたね。
 では、また来月。(中原幸子)

  【参考文献】

(1)旦部幸博著『コーヒーの科学―「おいしさ」はどこで生まれるのか』(講談社、2016年2月初版。2017年9月、第10刷)
(2)Ivon Flament著『Coffee Flavor Chemistry 』(英語)(Wiley、2002年)


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