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言葉を探る−バックナンバー
月刊「e船団」 「香りとことば」2020年2月号

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醤油(しょうゆ)

 酢、味噌、とくれば、次は、というか、もっと早くに「醤油」が登場すべきでしたね。
 私、醤油と言えばきっと思い出すことがあるんです。
その1。
 小学生のころ、同級生のKちゃんのお家で、大きな、大人の男の人が梯子をかけて登るような桶に、いろんなモノを投入して、醤油の仕込みをしているのを見たこと。
その2。
 いつ頃のことだったか、もう思い出せないのですが、

 色に出さずによい味つける、醤油は龍野のヒガシマル
 口に出さぬがわかるでしょ
 わたしはあなたに、ととん、とんとん、首ったけ


 といううすくち醤油のコマーシャルソング。
 このうろ覚えの歌詞が果たして正しいか、また、いったいいつ頃のことだったのか、と、この歌詞をgoogleで検索してみたのですが、ヒットはゼロでした。
なんで? ヒガシマル醤油さん、是非、ホームページに掲載して、あの大ヒットしたコマーシャルソングを永久保存してあげてください。

 あ、もうひとつ思い出しました。私の祖母は素麺が大好きで、今日のお昼は素麺、と決まって、大きな鍋で茹でて、笊(竹の)にあけて井戸端でごしごしと揉み洗いする、その時に、もうつまみ食いしてました。「キジョウユでええんや」と言って、醤油をちょっと垂らして。キジョウユは生醤油で、広辞苑にもこう載っています。
(1)他の調味料などをまぜない醤油。醤油を水で割らずに使うこと。
(2)煮立てない醤油。

 祖母のキジョウユは、多分、(1)だったかな、と思います。
 その頃、昭和20年代ですかね、私の育った田舎では、醤油はカラになった1升壜を持って醤油屋(紀州弁では「ショユヤ」)へ買いにいくモノでした。母の実家はタバコ屋で、小間物や酒、その他もろもろを売る店で、醤油の量り売りもしていました。母の里帰りにくっついて行って、お店に置かれた品々やお代のやり取りなんかを見るのが楽しみでした。
 で、いま、と言っても平成28年度の統計ですが、総務省の家計調査によれば、私たち日本人は1人当たり年に1リットル入りを約6本消費している、とのこと。
 商品開発真っ盛り、数えきれないほどの醤油製品が巷に溢れています。醤油メーカーの最大手5社はこの5社だそうで、


 例えば、こんな商品がネットに出ています。
 これ(↓)が最大手キッコーマンの「キッコーマン ディズニー『いつでも新鮮シリーズ』しょうゆ」、


 そしてこれ(↓)がヤマサの「鮮度生活スヌーピーボトル」です。



 ところで、東京ガスのホームページには「ウチこと」(1)っていうページがあって、そこに「醤油の種類と料理の使い分け〈覚えておきたい〉5つの味が出ています。


 うっかりもいいところですが、醤油ってJAS規格(2)があって、これはそこに載っている醤油の分類です。分類の5つが色で表されているのですね。
 で、5種類それぞれが、3つの等級、すなわち、特級、上級、標準に分けられます。

醤油の等級
 超特選丸大豆醤油の特選のようにJAS法で等級が定められている。醤油の種類によって規定値は異なり、いくつかの項目があるが、重要視されるのはうま味の値。醤油の場合は全窒素分で計られるので、この値が大きいほどうま味が強いとされている。

 と、いうわけです。

 で、「醤油」という名称ですが、私はずいぶん前から、なんで「」なんやろ、と不思議に思っていました。醤油だけでなく、酢も味噌も、みんな日本文化の大事な担い手だ、ということを認識してからは、ますます興味がつのっていたのに、調べずにいて、こんど、初めて『日本文化事典』(3)で見てみました。「味噌・醤油」と1項目にされています。多分、両者とも、原型は同じ「醤(ジャン・ひしお)」であり、弥生時代にはすでに保存食・なめものとして「魚醤(うおびしお)」というものがあった、という、歴史的な背景が考慮されているのでしょうね。
 それから、不精せずに調べてみるものですねえ。私の故郷・和歌山が醤油の歴史に深くかかわっていることがわかりました。

 とは、食材に塩を加えて発酵させ、保存性を高めた調味料の総称である。草醤、肉醤、魚醤といった種類がある。仏教などとともに大陸から伝来した。肉食が禁じられると、肉醤は作られなくなり、穀醤・魚醤が中心になっていった。醤油の出現には諸説あるが、鎌倉初期に中国の径山寺味噌の製法が紀州(現和歌山県)の湯浅に伝わったことが発祥とされる。その製造過程において桶下に溜まった液体が煮物の調味料に適していたため、これを改良して湯浅溜式醤油を製造・販売したのが正応年間(1288-93)であったという。中世には一部地域で醤油が出回り、安土桃山時代には、湯浅醤油が醤油回送船で他の地域へ出荷されていたそうである。

 ちょっとうれしい気分。
 「」も調べました。ジャパンナレッジの「新選漢和辞典 Web版」にこう出ています。

意味
(1)〈あぶら〉
(2)ゆるやかに流れるさま。
(3)つやつやとして美しいさま。
(4)雲のさかんにわき起こるさま。「油雲(ゆううん)」
解字
形声。氵が形を表し、由(いう)が音を示す。氵は水。由には、なめらかな意味がある。油は、もと、川の名であるが、なめらかな水の意味で、水あぶらのことにもなる。


 といえばあぶら、水とは水と油の仲、どうして醤油という水と仲の良いモノの名前に? と不思議に思っていましたが、魚醤から「ゆるやかに流れ」出た液体ということだったのでしょうね。
 ほかのもろもろの??は、また来月に。中原幸子

【参考文献】

(1)東京ガスホームページ「ウチこと」(https://tg-uchi.jp/topics/4899)
(2)醤油の知識(https://www.s-shoyu.com/knowledge/0311)
(3)神崎宜武/白幡洋三郎/井上章一編『日本文化事典』丸善出版株式会社、2016年 刊


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