言葉を探る−バックナンバー
月刊「e船団」 「香りと言葉」2009年5月号/付録


六国五味

 【六 国】
伽 羅品位高く、優にして苦味を主とする。高尚なる事雲上人の如し、故に遍昭僧正とする。
羅 国薫り鋭く、苦味を帯びて白檀の如き処あり、凛然たる武士に似たり。業平の表面女色を装へそ、内心の大志を抱けるに比すべし。
眞那加薫り軽く、艶にして早く香の失るを良しとす。少し癖有りて愁いを含める女に似たれば小野とす。
眞那蛮甘味を主とす。銀葉の油ぎるは此香の證なり。他に劣りて卑き処あり。故に山賤の花蔭に休らへる黒主に適すべし。
寸門多羅酸味を主とす。品位優ならず。いはゞ商人のよき衣着たりとやいはむ。故に此を安秀と見たつべし。
佐曽羅香気冷かにして、酸上品なるは伽羅に紛ふ処あり。高尚なれば、高僧の部として喜撰に擬す。
(付)新伽羅「伽羅」の樹脂が十分に円熟していないものを「新伽羅」分類することがある。 

 【五 味】
蜜を煉る香の甘きが如し。
黄檗(きわだ)の苦きが如し。
丁字の辛きに似たり。
梅実の酸きが如し。
汗の鹹きが如し。

〔参考文献〕
杉本文太郎著『香道』(雄山閣出版、1969年)
~保博行著『香道の歴史事典』(柏書房、2003年)


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