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月刊「e船団」 「香りと言葉」2008年4月号 お香あれこれ(1) 沈香漂着
三年夏四月、沈水、漂著於淡路嶋。其大一囲。 中原幸子
参考文献〕(1)坂本太郎・家永三郎・井上光貞・大野晋校注『日本書紀(四)』(岩波書店,1995年) (2)宇治谷孟著『全現代語訳 日本書紀(下)』(講談社学術文庫、1988年) (3)塚本哲三編『水鏡 大鏡 増鏡』(有朋堂書店、1929年) (4)神保博行著『香道の歴史事典』(柏書房、2003年) (5)後藤丹治校注『日本古典文学大系 太平記』(岩波書店、1962年) 月刊「e船団」 「香りと言葉」2008年5月号 お香あれこれ(2) 「配合」と「取り合わせ」
俳句の世界では「取り合わせ」と「配合」がほぼ同じ意味に使われているけれど、香りの世界ではちょっと違う気がする、と、ずっともやもやし続けて来ました。 |
| 配合 | 取り合わせ | コーディネート | |
| コラーゲン | 6,180,000 | 9,100 | 877,000 |
| バッグ | 3,020,000 | 220.000 | 7,420,000 |
| 古紙 | 706,000 | 1,080 | 18,900 |
| 茶道 | 723,000 | 55,200 | 354,000 |
| 花道+華道 | 304,800 | 66,000 | 329,000 |
| 香道 | 65,200 | 1,450 | 33,000 |
| 香水 | 650,000 | 86,100 | 501,000 |
| 俳句 | 52,300 | 23,400 | 126,000 |
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でも迷路の中で、ふと思った。化粧水にコラーゲンを「配合」すれば、コラーゲンは化粧水の中へ消えて、完全に1つのモノになってしまうけれど、服とバッグを「取り合わせ」ても、別のモノになる訳ではない、と。 香水で言えば、何種類もの香料原料が「配合」されて香水が作られ、その香水にステキな名前やボトルが「取り合わ」される。更に使う人との「取り合わせ」、使われる場面での「取りあわせ」も発生する。これは香(こう)でも同じだ。色々な原料を搗き混ぜ、練り合わせて薫物を作るのが配合で、その薫物をTPOに合わせて最も引き立つ形で使うのに「取り合わせ」が駆使されるのだ。 化粧水にコラーゲンを「取り合わせ」るとか、洋服にバッグを「配合」するなどの言い方がされないところを見ると、狭義の「配合」では均質なモノが生まれ、狭義の「取り合わせ」では均質なモノは生まれない。が、どちらも調和は生まれなければならない。そう考えると香りの世界での「取り合わせ」に取り付きやすくなった。 ところで、香りを創作する人は「調香師」と呼ばれる。一人前になるのにキビシイ修業が必要なのはなんでも同じだが、はじめて調香師のタマゴが香りを覚えているところを見せて貰ったとき、本気で怖かった。 Aという香料をニオイ紙に付ける→すぐ嗅いでニオイを覚える→5分ほどしたら嗅ぐ→覚える→30分ほどしたら嗅ぐ→覚える→半日ほどしたら嗅ぐ→覚える→翌朝嗅ぐ→覚える・・・途中でニオわなくなったらいつニオワなくなったかを記録して、やっと1件終了。短いのは数分で消え、長いのは何週間もにおい続ける。 Bという香料も同じように覚える。 更にAとBを比率を変えて配合し、それぞれの比率毎に覚える。厄介なのはAとBを配合すると、ニオイが変わるだけでなく、蒸発する速さも変わってしまうことで、勿論、それも覚えなくてはならない。 だが、香りを覚えることなど、調香師へのほんの入り口に過ぎない。『香りの百科事典』(2)では「調香師になるために」の項にこうある。 調香師になるにあたり、最も重要な条件は、常人を超越した鋭い嗅覚と思われがちだが、そうではない。無論、それがあることは有利なことだが、ある程度までの嗅覚は訓練により鍛えることができる。 化学的知識も、同じくあったほうがよいが最重要ではない。 最も重要なのは、熱意と忍耐力である。一つひとつの香りを覚えたら次は2品の素材を合わせたバランスをみる。あらゆる可能性について突き詰め、さらに複数の素材のバランスを探る。かなり根気のいる作業である。しかしそのなかで、名香といわれるものの謎が解けてきたり、新たな組合せの発見ができたりする。香りの創作には長期間の試行錯誤が必要である。 そして、もう一つあげるとすれば、想像力である。一つの言葉から広がるイメージ、一つの素材から広がるイメージ。それを香りで表現するのが調香師の技量である。そのために日ごろから感性を豊かにする必要がある。(佐々木久美子) 言葉、イメージ、素材・・・。香りを創ることが、なんだか俳句を創ることと重なってきました。上で見た『俳句実作の基礎用語』(1)の「取り合わせ」の解説では、取り合わせるのは「素材」とされていますが、「素材」から広がるイメージを取り合わせること、「言葉」を取り合わせること、そんなことをもっと考えてみたくなりました。「取り合わせ」と「配合」が境界線で溶け合うが如き関係なのも、もしかしたら取り合わせの力とつながっているのではないか、などと思いつつ。 では、また来月。 中原幸子 〔参考文献〕 (1)「俳句研究」編集部編『俳句実作の基礎用語』』(富士見書房,2003年) (2)谷田貝光克編『香りの百科事典』(丸善、2005年) 月刊「e船団」 「香りと言葉」2008年6月号 お香あれこれ(3)香の「はたらき」
(お断り:今号より、文献の引用は茶色文字、ネットからの引用は青色文字です。) 戻る |