月刊「e船団」 「香りとことば」2019年 4月号

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ピンク(ぴんく)

 ピンクが流行ってるなあ、と思われたこと、おありですよね?  電車の中の広告が、やたらとピンクになった、と気になって、身の回りを見回すと、ピンクを着ているオジさんまでいる! 「あれ、ピンクですね」と声をかけると、うれしそうに、「ウン」と答える。私などは、この間買ったピンクのセーターを、気恥ずかしくて着そびれているというのに。

  駅に置かれている冊子ももピンク満開。左がJR茨木駅でみつけた茨木市の「市民さくらまつり」、右がJR大阪駅で見つけたもので、列車などの予約のガイドブックです。

 桜祭りや行楽の案内に限らず、防災(左)やハローワークのチラシ(右)までピンクだ!



 佛教大学の紫野キャンパスでもあちこちにピンクがいっぱい。


 左の書道博物館のチラシも私から見れば思い切った配色だけれど、もっとビックリしたのは、右の芭蕉の像に添えられた「片雲の風に……」の文字。このピンク、芭蕉さんも目を回しそうな感じ。あ、意外とよろこんでる?

 でも、このピンクの洪水よりも、もっと驚いたのが、皇后陛下 美智子さまのご本『降りつむ』。帯、表紙、付録のDVD、と全部ピンク。


 (実物はもっと美しいんです、ごめんなさい。)
 これで、私は、もう、こんなにピンクがあふれてるのには何かワケがある、としか思えなくなりました。
 で、ひょいと思い出したのですが、流行色って、自然発生的に流行り出すのではなく、どこかの団体が決めてる、とか何とか聞いた覚えが。
 それで、ネットで検索してみたら、すぐに、一般社団法人日本流行色協会(JAFCA)のホームページ(1)に行き当たりました。JAFCAはこんな団体だそうです。
JAFCAでは、独自に実施する国内生活者の志向やマーケットの動向調査と、グローバルなカラートレンドを選定している「インターカラー」(国際流行色委員会)情報をもとに、各分野の動向に精通したカラースペシャリストで構成される専門員会によって、日本の産業に向けた最先端のカラートレンド「JAFCAファッションカラー」を選定、発信しています。
 また、部会・分科会活動においては、会員相互の交流の場の提供、新たなテーマによる共同研究などを行っています。


 で、そのトレンドカラーはと言えば、こんな感じで、この数年、ピンクっ気はないのです。


 ピンクはJAFCAが発表した流行色ではないことはこれで分かりましたが、じゃ、なんでこんなにピンクなの、というところが、残念ながらわからない。きっと何かちゃんとしたワケがあるんだろうと思うのですが、私の手には負えない。どなたかご存知の方、教えてください。
 もっとも、ピンクはときにブームを来たし、「ピンクブーム」とか「ピンク男子」なんて言葉まで生まれたと、『日本のファッションカラー100』(3)という本に出ています。

 で、そもそも、わたしがなぜピンクに興味をそそられたかと言えば、こんなにもてはやされているピンクって、香りで言えば何だろう? と思ったからです。
 いつも愚痴っていますので、皆さん耳にタコ(目にタコ?)かと思いますが、香りって言葉で表すのがとても難しいのです。それでも何とかして香りを表現したい、という願望に駆られて、というか、必要に迫られてやってみているのが、色の名前を借りて表現する方法との取り組みです。
 調べてみましたら、たくさん文献があって、中でも「香りイメージの色表現による伝達」(2)という、株式会社コーセー研究所の方たちの研究は詳細を極めたもの。延べ200人ものパネリストを動員して、香りから連想される色を統計的にまとめあげられています。
 そして、いろいろなことがわかったものの、結局、香りと色を1:1で関連付けることはできない、という結論に至ったようです。

 私が知りたいことも、こうなると前途真っ暗な感じなんですが、ひとつヒントを得ました。それは、友人たちとの雑談の中から出て来た、ピンクは癒しの色だ、という説です。「2018年って、天災やら不穏なことやら、ようさん起こったやろ?」というのです。
 ここから攻めたらどうでしょうか!?
 癒し系の香りならたくさんあります。アロマテラピーの世界では、「癒す」は重要なテーマですから。
 と、思いついたところで、紙数が尽きました。例によって、とりとめない終わり方になってしまいましたが、来月は、果たして「ピンクの香り」ってどんな香り? というところを、癒しの側面から眺めてみたいと思います。では、また、来月。(中原幸子)

【参考文献】

(1)一般社団法人日本流行色協会(JAFCA)(https://www.jafca.org/)
(2)妹尾正巳、元永千穂著「香りイメージの色表現による伝達」(日本感性工学会研究論文集Vol.7 No3 P497-503、2008年)
(3)一般社団法人 日本流行色協会(JAFCA)著『日本のファッションカラー100 流行色とファッショントレンド 1945−2013』(ビー・エス・エス新社、2014年)


月刊「e船団」 「香りとことば」2019年 5月号

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ピンクなかおり

 ピンク、ピンク、ピンク。ピンクが頭の隅に居座っているせいか、やたらとピンクのものが目に入る。そして気付いたのは、ピンクって、べつに、いま、急に流行り出したのではなく、表面を覆うか、底を流れるかの違いはあっても、いつも、ずっと私たちの大好きな色だったのだな、ということでした。でも、まあ、いまはその表面に際限なく居場所を広げていることは間違いありません。
 近所のドラッグストアを覗いてみて、えっ、こんなところにもピンク? と驚いて、あまり高くないものをいくつか買って帰り、一服するか、とコーヒーを淹れて、ふと手元を見れば、マグカップがピンクじゃないですか。目の前のペン立てを見れば、使い慣れた鋏の柄がこれまたピンク。
 という具合に気付いたピンクたちを集めて写真に撮ってみました。


 え? ウチワですか? 昨年の夏、駅前で配られていたウチワなんですが、わ、ピンクだ、とさっき気が付いたのです。
 いま人気絶頂のチコちゃんは、もちろん、いつもピンクだけど、これは「チコちゃんに叱られる!ボーっと生きてんじゃねーよ!シゲキックス」という長い名前のグミキャンデイ。販売元はUHA味覚糖。その上の濃いピンクのかたまりとその右の円筒形のモノは化粧用のスポンジと、ヘアカーラー。どちらも新しい機能がウリのようです。右上のペットボトルは北霧島が育んだ天然水、神の郷温泉の恵み「美ウォーター」なんですが、もう、ズラリと並んだ水の棚でこれだけがひときわ目立ってましたから、キャップまでピンクは正解でしょう。

 ふーん、フレグランスとピンクってどうなんだろう、と思いました。 ネットで「香り ピンク」を検索してみたら、もう、呆然とするほどありました。こんな画像も出てくるのです。ピンク、ピンクの行進。
いったいどのピンクがどんな香りなんだか。

 このピンクのオンパレードを見て、当然ながら、ピンクの香りを嗅いでみたくなりました。
 ネットで検索してみて、目が釘づけになったピンクはこれ(↓)です。



 いちばん小さい4ml入り(高さ6、7センチ、1480円)をアマゾンで買って嗅いでみました。フルーティーとフローラルがほどよく調和した、ここちよく寄り添ってくるような香りです。
 もっと嗅いでみたいな、と思ってヨドバシ梅田へ行きました。え? デパートですか? デパートは売り場の女性が張り付いてお世話してくださるので、苦手なんです。その点、ヨドバシは勝手にあれこれ嗅ぎまわっても何も言われないので気楽でしょ?

 いろいろさわって、嗅いで、気付いたのですが、箱やボトルがピンクでも、中味は必ずしもピンクじゃなくて無色透明っていうのが多いのですね。それで、中味もピンクなのを選んで、この3つ、買ってきました。
 まず、アクアシャボン サクラフローラルの香り。

 発売は2013年ですが、販売は春だけの限定なので、「春の訪れとともに、恋しくなる香り」と、今年もパッケージが新しくなって登場。
 商品説明には、
 若葉が芽吹き、春の訪れを感じる頃。
 誰しもが恋しくなる香り、チェリーブロッサム。
 誰からも愛されるシャボンの香りとサクラの香りを融合させました。
 華やかで儚いサクラの香り。それをシャボンで包み込むことで、春はもちろん季節を選ばずまとえる香りになりました。
 注目すべきはアクア シャボンのシンボルとも言えるビー玉。桜色のビー玉が揺れるたび、春が恋しくなります。(無くなり次第、販売終了となります。)


 それから「samourai woman one love」


 「one love」って、何? と思ったら、「いくつもの愛が重なりあって一つの大きな愛になる、それがワンラブ」だそう。へーえ、知らなかった。ステキな言葉があるもんだなあ、と感心。「キュートでロマンティックなフレッシュ フルーティーノートの香りから、愛が広がります」って。

 そして、COACH NEW YORK


 写真の出来がイマイチですけど、ほんとはとても高級感のあるステキなピンク。箱も同系統の白に近いピンクです。
香りは「生き生きとしたニューヨークのダウンタウンスタイルを彷彿とさせつつも、フェミニンでセンシュアルさを残す」と説明されてるんですが、センシュアルが??。コンサイスの英和で調べてみると、
sensual:1肉欲にふける、好色の、性欲をそそる、肉感的な。2官能の、肉体の、官能的な。 と、日本語に訳されていない訳がわかるような意味でした。

 もちろん、折角買ってきたのですから、そうそう、言い忘れましたが、3本で8320円もしたんです、心ゆくまで嗅いでみました。

*アクアシャボン サクラフローラルのかおり
 トップはふわ〜とやさしい、実にピンクの感じのフローラル。迫って来る感じがまったくなく、やさしく寄り添ってくる感じ。うーん、どういえば通じるのか、いつもながら、香りの説明はもどかしい。
 数あるピンクのなかでも、これはたしかにほんのりとしたチェリー・ブロッサム ピンク。 癒されます。


*samourai woman one love
 これは、キリっとした感じが立ち上ってくる。うん、たしかに背筋をピンと伸ばしたサムライ・ウーマンだ。あ、薙刀の女性の感じかも。 強そうだけど、しばらくするとカームダウンして、癒される感じに変わっていくみたい。
 そうですねえ、ピンクの種類で言えばカリーニョ・ピンクかなあ。



*COACH NEW YORK
 「フローラルな中にもこっくりとした甘くセンシュアルなオリエンタルを感じるフェミニンな香り」「ラブリーでゴージャスなフルーティー・フローラル・ムスキーの香調」とのことですが、ほんとうに、ミドルノートのあたりから、ムスクの香りに圧倒されそうになります。
 ボトルよりもちょっと濃いピンクを想像するけどなあ、わたしは。例えばサロメ・ピンクとか。


 だらだらと、すっかり長くなってしまいました。ごめんなさい。あ、色のイメージ、違うよ、というご感想がありましたら、是非お寄せ下さい。では、また来月。(中原幸子)


月刊「e船団」 「香りとことば」2019年6月号

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梅雨(つゆ)もよう

 奄美が梅雨入りしたもよう、と気象庁が発表したのは5月14日でした。沖縄は5月16日。沖縄の16日は平年より1週間遅い由。ただし、昨年はもっと遅かったので、これでも昨年よりは16日も早いのだとか。

   不思議なのは、気象庁が発表する梅雨入りや梅雨明けの日付には、全部「ごろ」が付いていること。この気象庁のホームページでも、近畿地方の「昭和26年(1951年)以降の梅雨入りと梅雨明け(確定値):近畿」が、(確定値)とあるのに、全部ていねいに「ごろ」がついています。ちょっと2017年と18年のおころを見てみると、

 年       入り      明け    梅雨の時期の降水量の平年比(%)
2017年   6月20日ごろ  7月13日ごろ       81
2018年   6月 5日ごろ  7月 9日ごろ       162
平 年    6月 7日ごろ  7月21日ごろ  


  ね?

沖縄地方の梅雨入りのニュースもこんな具合です。
 今日16日(木)11時、沖縄気象台は、沖縄地方が梅雨入りしたと見られると発表しました。
 平年より7日遅く、昨年よりは16日早い梅雨入りで、今月14日(火)の奄美地方に次ぐ発表となります。

 梅雨入りの予想というのもネットにアップされてますが、ご覧のように一々「」が付いています。まあ、予想なら「」でいいような気も。

(ウエザーニュース〔https://weathernews.jp/s/topics/201905/160055/〕より)

 いま、私が息をしているここが、梅雨かどうか、って、そんなに分かりにくいのでしょうか? 私が子どものころ、つまり昭和20年代ならいざ知らず、今どきどうして「」が外せないのか、すごく不思議!!

 と思って、「梅雨入り、梅雨明けってどうやってきめるの」と、いい加減な質問でググってみたら、こんなピッタリのサイトがありました。
 「アズミちゃんネル」というサイト、こちらです。やりますねえ、アズミちゃん! 
 ホントに面白いです。皆さんも是非訪ねてみてください。
 で、このサイトに紹介されている「梅雨入り」の定義とは、

暫定的な決め方ですが、以下のような定義があると言われています。
 ・晴天が2日以上続いた後、
 ・梅雨前線の影響で、前日と本日が雨で、
 ・さらにその後1週間の天気予報が5日以上雨または曇り。

 そして「梅雨明け」の定義は、
 ・雨が2日以上続いていた後、
 ・梅雨前線が北上して、前日と本日が晴れで、
 ・さらに週間天気予報で5日以上が晴れ(または一部曇り)。


 両方とも「暫定的」という言い訳(失礼!)が付いていますので、念のため。  まあ、これなら「ごろ」が付いて廻るのも仕方ないか、という感じですね。

 ところで、いったい、梅雨って、なんやろ、と、改めて思って、ふと『雨の名前』(1)という本があったのを思い出し、これ(↓)です、



開けてみましたら、「梅雨」のページには、こんなに梅雨がありました。
 青梅雨、暴れ梅雨、蝦夷梅雨、送り梅雨、男梅雨、女梅雨、返り梅雨、空梅雨、走り梅雨、迎え梅雨。

 索引にも「○○梅雨」がたくさん!
 青梅雨、荒梅雨、蝦夷梅雨、送り梅雨、男梅雨、女梅雨、返り梅雨、空梅雨、迎梅雨(げいばいう)、梅雨、菜種梅雨、梅雨(ばいう)、梅雨前線豪雨、走り梅雨、迎え梅雨、陽性梅雨(ようせいばいう)。

 でも、不思議なことに(不思議じゃない?)「梅雨○○」はないんです。
 へーえ、季語はどうやろ、と思って、『図説 角川大歳時記 夏』(2)の索引を見てみました。
 すると、こちらには、「梅雨○○」が、ズラリと並んでいます。
 梅雨あがり、梅雨あがる、梅雨明、梅雨穴、梅雨入、梅雨雷、梅雨菌(つゆきのこ)、梅雨雲、梅雨曇、梅雨寒、梅雨寒し、梅雨じめり、梅雨空、梅雨茸、梅雨出水、梅雨鯰、梅雨に入る、つゆの明、梅雨の雲、梅雨の月、梅雨の蝶、梅雨の後、梅雨の晴、梅雨の星、梅雨の山、梅雨の雷、梅雨はじまる、梅雨の晴、梅雨晴間、梅雨冷めく、梅雨やませ、梅雨闇。

 大分前に正月の句会に「初ネクタイ」の句を出したら、「なんでも『初』をつけたらええというもんじゃない!」と大目玉を食ったことがありましたが、これって、なんか、そんな感じだなあ、などと思って、ふとページの欄を見ると、
「梅雨」は天文、「梅雨あがる」は時候、ここまではわかるけど、「梅雨穴」は地理だとある。これって何? と思えば、なんと、こんな解説が。

 梅雨期、降り続く雨のため、湿潤の地または地盤のゆるい地に思わぬ陥没を生じ、そこから水が湧出したりすることをいう。山崩れや洪水と共に梅雨の災害の一つである。

 「梅雨」って一筋縄ではいかないだろうな、とは予想してましたが、この気象用語の「梅雨」と俳句の季語としての「梅雨」の守備範囲の違い方って、ハンパないですね。  思っていたより何倍も込み入った「梅雨もよう」。来月は「梅雨明け」の月ですから、頑張って面白いことをご報告したいと思います。では、また来月。(中原幸子)

【参考文献】

(1)高橋順子・文、佐藤秀明・写真『雨の名前』(小学館、2001年初版)
(2)角川書店編『図説 俳句大歳時記』(夏)(角川書店、1973年初版)


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