ねんてんの今日の一句 バックナンバー

2010年2月28日
永き日や雑報書きの耳に筆
正岡子規

 「新聞雑詠」と前書きのある明治31年の作。雑報担当の新聞記者が耳に鉛筆を挟んでいる光景だろう。パソコンが普及する以前は、この句のような耳に鉛筆を挟んだ人がよくいた。特に物を書く人には。
 先日、東京で新聞社における子規の話をしたのだが、この句などを話題にしたらよかった。その時はこの句に気付かなった。後になってこの句が目に飛び込んできたのだが、そういうことが多い。つまり、後になって、「しまった!」と思うのである。

2010年2月27日
袖口で鼻水ぬぐひつつジャンケン
山口禮子

 「ソウル俳句会第14句集」から。ソウルに旅した折にこの作者にいろいろと世話になった。それからもう数年が立つが、ソウルを訪ねた仲間が集うと、しばしば数日を過ごしたソウルの冬の話になる。「正座して菓子折つぶし二月尽」も禮子の作。
 今日は船団堺句会の日。

2010年2月26日
会の日や晴れて又ふる春の雨
正岡子規

 『子規百句』(創風社出版)から。この「会の日」は句会、歌会?「晴れて又ふる」のが春の雨なのではなやいだ明るい気分が感じられる。つまり、会の楽しさが。
 先日から話題にしている『正岡子規ものがたり』は、その冒頭で、子規は「病苦にくじけない、おそろしくつよい精神力の人でした」と子規を見ている。この見方がいけない。こういう見方を拒んだ子規は、自ら言っているではないか。自分は年がら年中病気である、だから病気を楽しむほかない、と。それを強い精神力と言ってしまっては、子規の存在が全否定されてしまうだろう。
 「精神力」という言葉で人をとらえたくない。人と人の関係が生じる力があり、それを貪欲に楽しんだのが子規だった。この力は誰でもがその気になれば楽しめる。

2010年2月25日
春風にこぼれて赤し歯磨粉
正岡子規

 昨日、『正岡子規ものがたり』という子ども向けの本はひどい、と書いた。そのひどさの例をもうひとつ挙げよう。「子規のえらさ、大きさは、どこにあったのでしょうか。それほど才能豊かで、すぐれた感性をもっていたようにも、おもえないのです。本文に紹介した作品のほかは、ほとんどがつまらない、パッとしないものばかりです。俳句にしても、弟子の虚子のほうが、よっぽどいいものをたくさんのこしています。短歌にしても、節や左千夫のほうが、よっぽどふかみがあって、うまいのです。」この後で、子規の偉さは作品よりもそのリーダー性にある、と著者は言うのだが、子規は子規としてまぎれもなく深い。『子規百句』(創風社出版)から引いた今日の句など、とてもよい。歯磨粉がこのような鮮やかな言葉の風景画になったのは本邦初である。

2010年2月24日
春や昔十五万石の城下かな
正岡子規

 昨日から松山に来ている。ある雑誌の依頼で子規と漱石にちなむ場所を歩いているのだ。その取材の途中、子規記念博物館で子ども向きに書かれた『正岡子規ものがたり』という本を買った。これが私にとっては敵のような本。長く私などが否定してきたことをことごとく肯定しているのだ。たとえば、子規の写生について、「平板で、きまじめで、いまからみると、ものたりない感じのするものでしたが、すぐれた弟子たちによって、だんだんふかまり、りっぱな理念に成長していきました。」ひどいや、これ。子規の写生が弟子たちと違って独自であること、そのことを私などは何度も書いてきたのである。

2010年2月23日
広島や卵食ふ時口ひらく
西東三鬼

 「これは凄まじい句ですね。原爆を見つめるこういう文学の系列があるんです。」以上は『言い残しておくこと』(作品社)における鶴見俊輔の言葉。鶴見は戦争中、ジャワの海軍武官府にいたが、そこで楽しみだったのが、日本から届く新聞にあった相撲と俳句の記事だったという。よく負ける柏戸(!)と俳句、それに魅かれたというのがいかにも鶴見俊輔という感じ。

2010年2月22日
寒気団四股を踏みたくなることも
山本純子

 句集『カヌー干す』(ふらんす堂)から。春が近づいてはいるが、この句のように寒気団が気になる季節でもある。それにしても四股が面白い。四股を踏むのは自分だが、また寒気団でもある。その両者のせめぎ合いが面白い。
 2月17日の「朝日新聞」大阪版にこの句集の紹介記事が出た。見出しは「日常がほくほくはずむリズム感」。数句を紹介して「ほらね。どこかほくほくしている。不思議でしょ」と書く。この文体がよい。俳句を明るく、とても現代的に紹介してくれた感じ。河合真美江記者の手になるものだが、この人とは来週、いしかわ県立動物園のデカばあちゃんを訪ねる。最長老のカバだが、今からほくほくしている。
 写真は鹿児島県知覧の柿の木。

2010年2月21日
春の灯や女は持たぬのどぼとけ
日野草城

 昨日に続いて小著『モーロク俳句ますます盛ん―俳句百年の遊び』(岩波書店)から引いた。この本は私の俳句史を中心にしたやや硬い内容の本である。草城の句は「近代俳句小史」に引いている。
 今日は午後、仲間と大江丸を詠む会。

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