2018年4月30日

故郷は隣町めき春惜む

稲畑廣太郎

 『俳句日記2016―閏』(ふらんす堂)から。故郷が隣町、という感覚が私にはなかった。それだけに、この句を目にしたとき、おっ!と思った。作者は芦屋市生まれである。つまり都市生まれの人の感覚が「隣町めき」なのだろうか。
 4月の当初の1週間を長崎市で過ごした。あと2週間くらいいたら長崎市民の気分になるかも、と思った。今後も好きな町にやや長めに滞在したい。(坪内稔典)


2018年4月29日

春風の蝶々結びひっぱりぬ

池田澄子

 角川書店「俳句」5月号から。春風が引っ張るのか。春風に揺れる蝶々結びを人が引っ張るのか。どっちでもよいだろう。両方でもよい。春風と蝶々結びの取り合わせが楽しい。
 「俳句」のこの号は金子兜太特集。付録に128頁の「金子兜太読本」がついている。この読本を入手するためにも「俳句」のこの号を買いたい。(坪内稔典)


2018年4月28日

はるのあさスカートはきたい気ぶんだよ

上田麻央

 『小学生のための俳句入門』(くもん出版)から。作者は作句当時京都市の小学1年生。
 小学生向けの本をもう1冊出した。伝記『松尾芭蕉―俳句の世界をひらく』(あかね書房)である。こちらは大人にも読んでほしい。俳諧(俳句)とはどのような詩なのかを考えている。(坪内稔典)


2018年4月27日

赤ちゃんを始めてだっこ春の風

河村由衣

 作者は作句当時、伊丹市の小学6年生だった。『小学生のための俳句入門』(くもん出版)から引いた。この本、佛教大学小学生俳句大賞の10年間の優秀句を紹介し、併せて、俳句の作り方を私が指南する趣向。小学生やその保護者、学校の先生を読者として意識しているが、誰が読んでも楽しいと思う。(坪内稔典)


2018年4月26日

膝すべり落つるナプキン春愁ひ

岡本しん子

 4月22日の徳島句会に出た句。春愁とは確かに「膝すべり落つるナプキン」くらいのものだろう。この句会では私の誕生日を祝ってもらった。ちょと気はずしかった。
 あらためて予告する。5月17日(木)2時から兵庫県伊丹市の柿衛文庫で「貞徳の会」を開く。まずは同館で開催中の展覧会「松永貞徳とその周辺」を見学、その後、貞徳の会第1回を開く。むつかしいことをするわけではない。俳句流行のきっかけを作った貞徳を皆で読んでみようという会だ。とりあえずは1カ月に1回くらい開きたい。(坪内稔典)


2018年4月25日

春風に腕押しをするわらびかな

親重

 『犬子集』から。春風に吹かれているわらびは腕相撲をしているようだ、というのであろう。「おらるるは蕨にやなきうで力」(一正)も『犬子集』の句だが、蕨は腕のように見えたらしい。
 今、貞徳や貞門の俳諧を読む人はほとんどいない。だったら、読んでみようじゃないか、が「貞徳の会」を始める動機。京都の妙満寺の花や月の会で親しむようになった貞徳、その貞徳をちゃんと読もう、ということでもある。この貞徳の会、5月17日(木)2時から柿衛文庫で1回目を開く。おととい5月16日と告げたが17日(木)が正しい。(坪内稔典)


2018年4月24日

まん丸に出(いづ)れど永き春日かな

春可

 貞門の俳句選集『犬子集』から。春の日を「永き日」「永日」ということを遊んでいる。
 昨日の話題の貞徳の会だが、当分、貞徳の「戴恩記」の輪読を中心にして活動する。活動の拠点は柿衛文庫と妙満寺。私と小枝恵美子さんがしばらく幹事をつとめる。発生した時期の俳句のはつらつとした気分を楽しもうではないか。貞徳や俳諧をほとんど知らない人もどうぞ。(坪内稔典)


2018年4月23日

和歌に師匠なき鶯と蛙かな

松永貞徳

 『犬子集』から。古今和歌集の序で「花に鳴く鶯、水にすむ蛙の声を聞けば生きとし生けるもの」は皆歌を詠む、と紀貫之が述べた。つまり、鶯や蛙は歌の師匠的存在(この上のない存在)なのだ。
 兵庫県伊丹市の柿衛文庫で「松永貞徳とその周辺」という展覧会が開かれている。柿衛文庫が所蔵する貞徳関係の資料が並んでおり、貞門の俳諧を身近に出来る。来たる5月16日(水)午後2時から、柿衛文庫の展覧会を見る集まりを持つ。展覧会を見て、その後で「貞徳の会」を旗揚げする。(坪内稔典)
 <訂正あり、今日の一句4月25日参照>


2018年4月22日

げんまんは明日のことよげんげん田

上田日差子

 「俳壇」5月号から。「明日のことよ」が意味深長。たとえだ5歳の指切り、70代の指切りではずいぶん「明日」に意味の幅がある。私は今日、74歳になった。
 佛教大学四条センターで「仏教的一生」と題した対話を始める。相手は浄土宗の僧で佛教大学学長の田中典彦さん。毎月、最終金曜日の午後3時半から。1年にわたって佛教や信仰のことなどを考える。 (坪内稔典)


2018年4月21日

金属音が君らの眼ばたき夏が来る

金子兜太

 まるでロボットに向かっている感じ。もちろん、現代の青少年の金属的な感じ(メカニックな印象)を表現しているのだろうが。文体的には三鬼の「おそるべき君らの乳房夏来る」のなぞりかもしれない。この句、「WEP俳句通信」103号から引いた。同誌は「兜太逝く」を特集、酒井弘司、筑紫磐井などが兜太を論じている。私も〈『今日の俳句』のころ〉を書いた。(坪内稔典)


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