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2019年5月20日

毛虫降る午後には午後の時間割

秋山泰

 なんだかいやな午後という感じだが、毛虫をも許容する午後、と見ると、この午後は懐が深いのかも。『船団の俳句』から引いた。
 今日の句、季語「毛虫降る」に「午後には〜」以下が取り合わせられているのだが、これって、言葉の構造そのものである。季語という記号に、その記号が示すもの(記号内容)を取り合わせたのだ。俳句を詠むとは、その都度に新しい言葉を作ることに等しい。(坪内稔典)


2019年5月19日

カタバミは山崎自転車屋のおやじ

芳野ヒロユキ

 『船団の俳句』(本阿弥書店)から。カタバミの花と取り合わせられたとき、山崎自転車のおやじがなんだか懐かしく、そして優しい。昭和の典型的風景という気がする。「五月だし通天閣でうんこする」もこの時期の代表的名句。(坪内稔典)


2019年5月18日

はつなつをちぎって今朝のサラダして

野本明子

 「船団」118号から。朝ごはんがうまそう。もう一つ、明子さんの句を引こう。「窓の雲わたしだったり夏だったり」。いいなあ、気張ることなくごく自然に心身が大自然と一体化している。「ちぎって」「サラダして」の対句的表現が詩を生み出していることはいうまでもない。(坪内稔典)


2019年5月17日

嚢中無一物夏蝶飛んで現れ来

高浜虚子

 82歳の虚子の句だが、「嚢中無一物」と「夏蝶」の取り合わせが絶妙。句日記を見るとこの句の前には「蜘蛛に生れ網をかけねばならぬかな」が、後には「空間を遠雷のころびをる」という事実を報告しただけの駄句がある。虚子はたくさんの駄句を作りながら、ときおり不意に駄句の山をひょいと超えたのだ。(坪内稔典)


2019年5月16日

緑影を出て来る君も君もかな

高浜虚子

 昭和31年の作。この年の虚子は82歳である。この句、「君も君も」という表現がうまい。反復が感情を表現している。一昨日の中原幸子さんの作と同じような〈反復の妙〉が発揮されている、と言ってもよい。いや、反復の妙というちょっとしたことだけで句が成立している、と言い直すべきだろう。(坪内稔典)


2019年5月15日

彼一語我一語新茶淹れながら

高浜虚子

 新茶という季語の本意を際立たせたような句。つまり、「彼一語我一語」が新茶の世界、一語で心が通じるのだ。この句、昭和31年5月の句会での作。同時に「到来の新茶を淹れて佳客あり」などの4句が作られているが、いずれもその場の報告的俳句でつまらない。つまり、5句の内の一句が冴えていて、それがこの句だ。(坪内稔典)


2019年5月14日

毎日毎日毎日夏で朝ごはん

中原幸子

 この作者の句集『柚子とペダル』が好評。80歳がブレークしているという感じである。ブレークに伴って俳句の自在さ、日常語の詩的魅力が広がったらとてもすてきだ。
 今日の句、毎日の反復が朝ごはんの楽しさを伝える。長い夏にうんざりしているのかも、という読みがありそうだが、音の響きはうんざりよりも快さを伝える、と私は思う。単純に反復する日常、それを面白がっているのだ、きっと。その面白がる姿勢に幸子さんの元気の素がありそう。(坪内稔典)


2019年5月13日

円卓の蟻二周目に入りにけり

対中いずみ

 2019年版「俳壇年鑑」から。ごちそうよりも蟻が気になっている。いや、蟻こそがその日のごちそうなのだろう。「亀あるく白詰草の野を揺らし」という童話のような楽しい句もいずみさん。(坪内稔典)


2019年5月12日

若葉寒箸を入れれば濁るもの

ふけとしこ

 食べるという行為は濁すこと。いや、生きること自体が濁すことだろう。で、人はときどきその対極(たとえば死)を思ったりあこがれたりする。季語「若葉寒」が澄まし汁の静謐を深々ととらえた、というのが私のこの句の読み。「俳壇年鑑」2019年版から。(坪内稔典)


2019年5月11日

田を植ゑてそして父らは戦場へ

名村早智子

 この句のような時代が確かにあった。戦争をしないこと、それを人間の知恵や尊厳と見なしたい。この句、2019年版「俳壇年鑑」(本阿弥書店)から。
 4月の末、名村さん、前田攝子さん、浅井陽子さんの4人で「まのあたり句会」というのをやった。句会のさまを見てもらう、いわば公開の句会だが、結構おもしろかった。この句会を仕掛けたのはNHK文化センター京都教室の小方美奈さんだった。(坪内稔典)


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