2017年 3月26日

春風(はるかぜ)

 「辛いときや哀しいとき、私、高いところに登ります。下を見て、人間があまりにも小さいことを知ると、自分の悩みって、なんだか馬鹿馬鹿しくなります」そういって、後輩は、私をあべのハルカスの展望台に誘ってくれた。58階から見下ろす眼下、人間は小さく、意外とみどりが多い。心を傷つけるのも人間なら、心を癒すのも人間だと思った。
 プランターで黄色の花が揺れた。風がでてきた。
 「風、少しあたたかくなったね」
 「もう春ですぞ。春の風は春風ですぞ」
 彼女の茶化した言い方がおかしくて、私もつられて笑った。

(衛藤夏子、「船団の会」会務委員)


トップへ戻る [今週の季語]・[新季語拾遺]バックナンバー