2019年8月11日

線香花火(せんこうはなび)

 箸より短く、細い藁。その先に塗られた黒い火薬を火にかざす。暗闇の庭の隅で、浴衣どうしで。
 という光景にあこがれる。ナイアガラだのキティーちゃんだのパワーにまさる打ち上げ花火にはとうてい及ばないが、手花火には手に伝わる実感がある。華奢な線香花火は、その中でも実感ナンバーワンだ。落とさないよう大事に火玉を作ると隣の人の火玉と合体させる。こんな小さな恋があるだろうか。線香花火はやがて静かに静かに闇に帰る。空にも地にも帰れない。燃え尽きた棒を持って闇に突っ立っている二人はこのあとどこへ向かうのだろう。
(小西雅子、「船団の会」会務委員)


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