2018年11月11日

小春日(こはるび)

 母は認知症。おそらく重度である。思えば五年ほど前からあれっと思うことがあった。買い物に行くとレジでいつも一万円札を出す。小銭を出さないので財布が膨れ上がっている。病は徐々にそして急に進行した。今、かろうじて私のことは顔と名前がわかる。六十数年一緒に暮らしてきたのだから。私の連れ合いや妹のことは少しあやしくなってきた。あと数年もすると三人ともきっと忘れてしまうだろう。まあそれでもいいか。母は母だ。日の光が差す窓辺にいると母の口癖がでる。「ちょうどころあいやなあ」
(小西雅子、「船団の会」会務委員)


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