2020年2月16日

春の〜

 手元の『カラー版 新・日本大歳時記 春』の索引には「春の〜」という季語が117項目立っている。たとえば、「春の虹」「春の月」など。やわらかで優美な印象。中には「春の灸」とか「春の三日月」とか、これ今もいる?と思うものも。ともかく「春の〜」をつければ柔らかで優美なのである。そのうち「春のトマト鍋」などもできるかもしれない。季語ごちゃまぜだが頭の「春の」が絶対なのである。ところで、「春の風邪」。これも風流、艶美といってもいい印象。昨今は新型ウイルスが巷間で騒がれているが、ともかくウイルスと人類の戦いは今に始まったことではない。寛政年間、無敵を誇った横綱谷風が、「おれが倒れているところを見たいのなら、風邪にかかった時に来い」と語り、本当に罹って亡くなった流感は「タニカゼ」と名付けられた。享和年間に流行った流感は当時話題の放火事件から「お七風邪」と呼ばれた。風邪にも名をなす。春を感じる。日本人ならでは、か。
(塩見恵介、「船団の会」副代表)


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