2019年3月17日

ぶらんこ

 彼女は焦っていた。仮免に合格したのは嬉しいが、教習所の予約がなかなか取れない。気分を変えて単発バイトと決めると、希望の仕事にありつけた。よいこ達のために詳しくは明かさない。ただその日、よいこの瞳は輝いていたし「バイバーイ」と遠ざかる声も愛らしかった。この笑顔には全力で応えねば。でも声は出せない。目の前のレバーを使い、その日だけ与えられた体を操作する。「外側」の手をブンブンと振り続けるのだ。幸せな時間。しかし休憩のとき彼女は気付いてしまった。ガーン!動かしていたのは手ではない。ヒゲだ。小刻みにヒゲだけが動く●●●●なんて、怖すぎて笑えない。
 空を仰いだり地面を見つめたり。ぶらんこと青春は隣り合わせだ。
(高田留美、「船団の会」会務委員)


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