2018年10月14日

蓮の実とぶ(はすのみとぶ)

 「138年の歴史に幕」とSO会会報が舞い込んだのは9月吉日のこと。30年余り勤務したS学院の同窓会総会・懇親会のご案内状だった。退職してからのS学院のこの5年間の変貌。懐かしい旧校舎、新校舎、そして自慢の記念館などすべて取り壊された。そして学園でのちょっとしたオアシスになっていたスポット、人面魚と噂された鯉もいた池は埋め立てられた。K先生が毎年胸まで雨靴のような作業着でその池の手入れをされていた様子が、にこやかなお顔ともに思い浮かぶ。あの見事な鯉たちはどこへ行ったのだろう。あの池に息づいていた生きものたちは……。そう、蓮の花も咲いていた。蜂の巣状の種の飛んだ後のその池の蓮の花托が今、家にある。ゆめかうつつか、蓮の実が飛ぶ。そして、音もなく池に沈んでゆく。
 この季語エッセーが掲載される日、私は懇親会会場の神戸Pホテルの29階にいる。
(村上栄子、「船団の会」会務委員)


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