週刊:今週の季語 バックナンバー 2004年10〜12月
2004年12月26日

餅搗き

 子供のころ、正月が近づくと餅米を蒸す匂いで目が覚める朝があった。母親などは3時から、子供は5時から起きて、昼頃まで餅搗きをする。そうした時間は、私をとてもウキウキさせた。旧正月の頃になると、近所の人4,5人で家を持ち回りで寒の餅を搗く。これは水餅にして保存し、田植えの頃、酸っぱくなっても食べた。
 臼と杵の時代から、エンジンを回して機械で搗く餅搗きに変わっていったが、今では、水餅として保存しなくても、真空パックしたものや作りたての餅が、いつでも店で買うことが出来るようになった。餅も昔のように食べなくて、結婚をしてからは搗くこともなく、買って食べるものになってしまった。今年は何個食べるだろう。

(陽山道子(船団の会 編集部))


2004年12月19日

柚湯(ゆずゆ)

 「住まいのミュージアム・大阪くらしの今昔館」へ行ったことがおありですか。大阪の地下鉄「天六」駅へ直結していて方向音痴でもすぐ行けますよ。江戸時代の大坂の町屋が再現されていて、照明が刻々と変わり、明六つ、暮六つの気分も味わえます。
 古着屋に古着がずらり(当たり前か)、建具屋さんに古建具・・・そうか、江戸時代はリサイクルが盛んだったんだ。おっ、湯屋には当時の湯銭が。
 男女:8文、子供:6文、ぢのし:4文、ぬか袋:3文

 21日は冬至。冬至は柚湯。かんきつ類はいっぱいあるのに、なぜお風呂はユズなのか。ユズの香りは加熱に強いからでーす。

(中原幸子 (船団の会 編集部))


2004年12月12日

ルミナリエ

 南に海、北に山。人は東西に歩く。神戸、年の瀬、夜は「ルミナリエ」。ルミナリエの語源はイタリア語のIlluminazione Per Feste(祝祭のためのイルミネーション)。光の装飾で街中が彩られる。
 我が家は倒壊で跡形もなく、大人五人の家族は二間のアパートで仮の宿り。震災生々しき年の瀬、空地や倒壊した建物だらけの街の暗さに見たルミナリエ。僕も見物客もみんな、地味なジャンパーを羽織っていた。黒い人の上に明るい装飾。静謐な時間、今年ある命への感謝。光の回廊を巡る行列。配給待ち、義捐金待ち、トイレ待ち、輸送代替バス待ち・・・。行列は慣れっこ、誰もが無言でゆっくり光に見とれていた。神戸は元に戻るまで十年はかかると言われていた。めいる気持ちで見るルミナリエが、やけに明るかった。
 今、僕は、あの時横倒しになった高速道路の上から、ルミナリエの準備に追われる街を横目に、時速七十キロで車を走らす。今年で十回目のルミナリエ。十三日から始まる。

(塩見恵介 (船団の会 編集部))


2004年12月5日

忘年会

 静かな車内に、突然酔った乗客が乗り込んできて、仲間と大声で話し出した。ちょっと早い忘年会の帰りらしい。まだ通勤時間帯でほかに酔客は居ない。人々は職場のストレスから解放され一人になりたいのか読書か居眠りの時間をすごしていた。最近の電車は、防音性能がよくなって、乗客が静かにしていたらホテルのロビーより落ち着くぐらいになっている。そんな中で酔客の話し声が響き渡った。静かな乗客とは違和感のあるひとときだった。思えば、忘年会帰りにふさわしい場所は近ごろなくなっている。川ばたを風に吹かれてという帰り道もないし、放歌高吟して歩く場所も消えた。酔って帰る道がないとすると、忘年会も締まらない。帰りはタクシーか、余韻を消して電車か・・・現代の忘年会帰りは味気ない。

(飯塚英雄 (船団の会 編集部))


2004年11月28日

小春日和

 先日、ピアノのリサイタルへ行きました。ホールは欅並木を通り抜けた所にあり、ちょうど小春日和のその日は、とても気持ち良かったです。
 私が高校生の時に練習した曲もあり、ピアニストに憧れていた頃を思いだしました。結局、高い学費やら、オクターブの届きにくい小さな手やらの理由で諦めてしまったのだけど、そのおかげで俳句に出会えて良かったです。
1月に念願の句集『桜餅となりの黄粉がちょっとつき』(文芸社)を上梓する事となりました。本屋さんにお立ち寄りの際はぜひぜひ見てやって下さい。今まで支えて下さった坪内先生、俳句仲間の皆さんありがとうございます。そしてこれからも宜しくお願いします。

(黒田さつき (船団の会 編集部))


2004年11月21日

木枯

 11月中旬に木枯らし一号が吹いた。
 我が家のベランダに吹き溜まりの落ち葉が層をなしている。蜘蛛もいる。そこに「ケロちゃん注意」の立て札がある。
 この春から一匹の雨蛙が棲み着いた。皮膚は湿った緑色、洗濯物を干していると紫陽花の葉に乗り、3oぐらいの墨色の糞を葉の上でする。時には壁に張り付いてベランダに糞を落とす。夏が過ぎてケロちゃんの姿が見えなくなった。そうだ、,ベランダの掃除をしよう。すると、ケロちゃんはどこからか,困った顔でピョンと飛び跳ねてきた。肌の色は斑模様の灰色で木枯らしに 吹かれたように乾いていた。
 これからもケロちゃんに注意致しましょう。

(藏前幸子(船団の会 編集部))


2004年11月14日

落葉

 マチカネワニをご存知だろうか? 1964年に豊中市待兼山から出土した化石のワニである。山にちなんで名づけられ、市のマスコットにもなって親しまれている。体長は約7m。およそ40万年前に棲息していたらしい。その当時の地形は今とは違って、大きな川でも流れていたのか。  標高77mの、むしろ丘と呼んだほうがいいこの山は、冬になると、落葉が嵩高く積もる。思う存分そのうえを踏んで歩くのはとても楽しい。鳩も歩いている。乾いたような、近しいような、身体にすっと入ってくる音を立てながら。きっとまだ、この丘のどこかにワニの骨が埋まっているだろう。丘には年々、落葉が積もり、鳩が歩いている。

(笠学 (船団の会 編集部))


2004年11月7日

秋の山

 怒っている。地震に、ではない。あるテレビ番組のコメンテーターが新潟県中越地震の被災地、山古志村のヘリコプターからの映像を見ながら「こんなところ(崩れやすい山の傾斜地)になぜ住んでいるのか」と、発したからだ。まるで人間が住むようなところではないと言わんばかりだった。村を離れざるを得なかった人々が、この映像をどのような思いで見ておられたか。
 それぞれの土地には、その土地柄に見合った暮らし方がある。暮らし方を工夫し築いて来られたのだ。慣れ親しんだ家や田畑・里山・暮らし方が傷だらけになってしまった姿を目の当たりにし、きっと言葉を失い、呆然としておられたに違いないのに。なんと、こころのないコメンテーターなのか。
 「ああ! 山にはもう秋がきているよー」。晴れ晴れと見上げる秋の山が、緑の村が一日も早く戻ってくるのを、切に切に祈ります。

(岡村和子 (船団の会編集部))


2004年10月31日

枯蟷螂

 陶芸が趣味で、やや大きめのカーポートの下に灯油の窯を置き、月に1度くらいは焼いている。 その窯の横で、時々七輪焼きをすることがある。七輪焼きとは、七輪に炭を詰めて、その中に素焼きのぐい飲みを2〜3個放り込み、ドライヤーで風を送って焼くのだ。だんだん風を強めていくと、30分もすれば七輪内は1000℃に達し、火花を散らしながら火を噴く。炭をどんどん足して、更に風を送り、温度を1200℃近くまで上げると、その炎の色は薄赤色からオレンジ色へ。更には黄色へと変わってゆく。快感である。それから1時間くらい焼くと、ビードロのぐい飲みが焼きあがる。炭は特別なものではなく、バーベキュー用のマングローブの炭である。
 この季節、暖かくて過ごしやすいのか、このカーポートの下には動きの鈍い蟷螂が集まってくるのだ。

(小倉喜郎(船団の会 編集部))


2004年10月24日

蓑虫

 蛾の幼虫だが、蛾になるのはオスだけで、メスは一生蓑虫のままで蓑の中で卵を生 み生涯を終えるらしい。卵から孵った子どもの最初の食べ物は死んだ母親の身体で、 母親の残した蓑を削り取って自分の蓑にして、子どもは外に出て行くらしいが、子ど もの頃は、そんなことは知らず、ただただ木々にぶら〜んと垂れ下がっている姿がか わいいと思っていた。ところが、近頃めっきり蓑虫を見かけなくなった。数年前に、 雑木林の減少や農薬の影響、酸性雨などが原因ではないかと書かれていたのを何かで 読んだことがあったのだが・・・。淋しいことだ。
 かつて芭蕉は「蓑虫の音を聞に来よ艸の庵」の句で秋の虫の音を聴く会を企画し、 友を誘ったらしい。

(尾上有紀子(船団の会 編集部))


2004年10月17日

冬支度(ふゆじたく)

 「日本熊森協会」という会がある。この会は、1992年に兵庫県尼崎市の中学生たちから始まった。当時の新聞で、里に下りた熊が射殺されたがおなかに食べ物がなかったことを知った彼らが、野生動物の保護と自然の森を復元しようとドングリなどの木を山に植える活動を始めたのである。
 今年は、熊が人里に姿を現すことが多い。夏の猛暑と台風が多かった関係で冬眠前の熊が十分な餌をとることができないこと、里山が整備されず荒れ放題になり、熊が住む山と人間が住む里との境界が狭くなったことに原因があるらしい。
 熊にとって今年の冬支度は命がけである。

(岡 清秀(船団の会 編集部))


2004年10月10日

小鳥来る

 宝塚の夫の実家では、ベランダに鳥の餌台を設えている。日中はその横に、飼っている九官鳥の籠を置く。そのため、ベランダにはいつも野鳥がいっぱいだ。餌台には朝食の残りのパンのミミ(誰だ!食べ残しは?)、半分余ったおみかん、おやつのクッキーのくず、それに、九官鳥のキューちゃんが散らかした餌などを目当てに季節の鳥が来るのだ。
 秋は、留鳥も含めると、ヒヨドリ、アカゲラ、セキレイ、ツグミ、ヒワ、など。義母に言わせると、この鳥たち、特に渡り鳥をみていると、今年はいつまでも暑いのだな、とか、もう冬が来るな、とかがよく分かるそうだ。最近は、渡り方にも地球の温暖化の影響が、とも。そんな話を聞きながら、のんびりベランダを眺めるのは、結婚して知った楽しみのひとつ。

(朝倉晴美 (船団の会編集部))


2004年10月3日

唐辛子

 唐辛子は大きく分けて二種類あることを皆さんは知っているでしょうか?それは鷹の爪などに代表される辛味種と、しし唐やピーマンに代表される甘味種の二種です。最近、私は唐辛子をつかった料理にはまっており、トマトソースに丸ごと唐辛子が入っているパスタ(とあるパスタ屋オリジナルのパスタで絶望のパスタといってものすごく辛いです…)、チゲ、キムチチャーハンといった辛味種をつかったもの、ピーマンの肉詰やしし唐の天麩羅のような甘味種をつかった料理どちらも好きです。
 ハバネロペッパーという名のタバスコの原料になる辛味種を試してみましたが、さすが世界一辛い唐辛子だけあって辛いものが好きな私でも辛くて悶絶してしまいました。あの辛さは異常な辛さです。
 後、唐辛子の成分であるカプサイシンはダイエット効果や風邪などの免疫効果をあげる働きがあるそうなので、今からの季節にはもってこいの食材ではないでしょうか?是非この季節に唐辛子料理をお試しあれ。

(徳本和俊 (船団の会編集部))