
| 週刊:今週の季語 バックナンバー 2006年7〜9月 |
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2006年9月24日 鰯雲(いわしぐも)
鰯雲。この雲を仰ぎ見ていると遠い昔を思い出すような、遥か未来へ連れて行かれるような不思議な気持ちになる。「鰯雲記憶は母にはじまれり」(伊藤通明)。記憶を辿れば、その記憶が自身を地平のかなたへと運んで行く。過去にしても、未来にしても。 (南村健治(船団の会 会務委員)) 2006年9月17日 秋彼岸(あきひがん)
料理が上手で人の世話をするのが好きな1人暮らしの小母さんがいた。ご飯を食べさせてもらったり、泊らせてももらった。同級生の母親なのだが、厚かましくも彼のいない間をすっかり独占していた。私は結婚をして土地を離れ、小母さんも息子のいる東京へ引っ越した。無沙汰をしている間に、訃報を聞いた。お墓は田舎にあるという。はっきりとした場所を聞かないまま、見当をつけて墓参りを済ませた。 (陽山道子 (船団の会 会務委員)) 2006年9月10日 コスモス
クリーニング屋の粗品にもらったコスモスの種を、ベランダのプランターに蒔いておいた。時々水やりを忘れたり、エアコンの室外機の熱にさらされながら、それでも花が咲いた。マンション七階の青い空に、コスモスが揺れる。 (火箱游歩 (船団の会 会務委員)) 2006年9月3日 虫(むし)
まだ昼間は真夏だが、夕方になるといつの間にか虫の音がきこえるようになった。日本人と西洋人では、虫の音の聞こえ方が違う、というのをどこかで読んだ。つまり、日本人は左脳でキャッチするので言葉のように聞こえるのに対し、西洋人は右脳でキャッチするので純粋に音として聞こえる、というのだ。なるほど、我々は虫の音を「ちんちろりん」とか、「がちゃがちゃ」「すいっちょん」などと言葉のように表現するが、西洋人は、機械音、雑音のように聞くのだろう。これは、日本人は漢字など表意文字に親しむのに対し、西洋人はもっぱら表音文字のみであるためだろうか。 (早瀬淳一 (船団の会 会務委員)) 2006年8月27日 稲光(いなびかり)
日本にはじめて電灯がともったのは明治11年だったとか。私の祖父はそのころに紀州の山村で生れた。ようやく村に電線が届いたころ、友人と語らって電灯の普及に駆けまわった。 (中原幸子 (船団の会 会務委員)) 2006年8月20日 蜻蛉(とんぼ)
小学校2年生の担任をしている。子ども達は生き物が大好き。1学期は様々な生き物
が教室に登場した。その中で、教室で飼育したのが、アゲハチョウの幼虫とトンボの
幼虫であるヤゴ。今回はヤゴの話。 (中谷仁美(船団の会 会務委員)) 2006年8月13日 十六夜(いざよい)
秋は空気が澄んで月が美しく、俳句では月といえば秋の月のこととされる。秋の月は、十六夜、立待月、居待月、更待月など細かに呼び名があるが、満月の翌日で満月よりも出るのが遅れるため「いざよふ月」と言われる十六夜に格別に情趣が感じられるように思う。 (角田悦子(船団の会 会務委員)) 2006年8月6日 苦瓜(にがうり)
そういえば何年か前、俳句甲子園で付き添ったとき、沖縄の先生と話をしたことを思い出す。「暑し」という題が出ていたのだが、沖縄の子にとって、この題は当たり前すぎて、句作に苦労したそうだ。案の定、沖縄のチームはその題詠の対戦で敗れたのである。その夜、同部屋の北海道の先生も「夏の題は苦労する。」と嘆いていた。例えば「紙魚」。北海道にはいない虫なので生徒に説明しづらいとか。季題・歳時記はとても中央集権的だ。 (塩見恵介 (船団の会 会務委員)) 2006年7月30日 夾竹桃
私の住んでいる街は臨海工業地帯に隣接していて、暑くなると光化学スモッグ注意報が町内放送のスピーカーで流される。なるべく外に出ないようにとか、家に帰ったら洗顔するようになどと矛盾した指示が出る。「外に出られへんかったら生活出来へんで」と、私はつぶやく。工業地帯へ続く道路には夾竹桃が植えられているが、ピンクの花が勢い良く咲き出す時期になると、また光化学スモッグの出る季節になったなあと思う。夾竹桃の葉は、竹の葉に似てシャープだし、花はバニラの香りがする。排気ガスや煤煙に強いから道路脇に植えられることが多いのだろうが、本当は涼やかな川の流れの側が似合いそうな花だ。 (小枝恵美子 (船団の会 会務委員)) 2006年7月23日 蝉
やっと本格的に蝉の鳴き声が聞こえてきた。「ミ〜ン、ミン、ミン、ミ〜ン・・・」という声に、おっ、来た来た!と夏の到来を感じる。ちなみに去年は6月30日にお初の鳴き声を聞いたのに、今年は7月5日の夕方に一瞬聞いたきりで、遅いなぁと思っていると、11日の朝抜け殻を見つけ、13日の朝から本格的な声が聞こえてきた。蝉は成虫になるのに何年もかかるものが多いらしく、アブラゼミは丸6年かかるといわれているが、中には17年もかかる蝉もいるという。また種類によって、好きな木、鳴く時期や時間が決まっているらしく、ヒグラシは朝早くと夕方、クマゼミは午前中、アブラゼミは午後に鳴くらしい。南の島、トラック島にすむミドリチッチゼミという蝉は毎日夕方6時になるとチリッ、チリッと鳴き出し、きっかり30分間鳴くらしい。時計代わりになる蝉である。ずぼらな私はその正確さを見習わねばならない。 (尾上有紀子(船団の会 会務委員)) 2006年7月16日 汗
自宅のマンションから200メ−トル先に消防署がある。出動のサイレンがなると、我が家の愛犬はそわそわして落ち着かない距離だ。 (藏前幸子(船団の会 会務委員)) 2006年7月9日 みずあそび(水遊)
友人の家にはミニチュアダックスフントが2頭いる。ティナとビビ、女の子たちである。3ヶ月ほど前にティナの後ろ足が動かなくなった。この種の犬に多く見られる症状だ。ヘルニアとも、栄養不良とも言われている。医者はすぐに手術をしたがるそうであるが、手術をしないですむならばそれの方が良い。なんとか針治療をする獣医を見つけ、毎日一時間以上かけて通い、ようやく回復に向かった。医者の話ではもうすっかり治っているはずなのだが、以前より待遇が良くなったせいか一向に立とうとしない。「あとは彼女の気持ちの問題です。」と医者は言う。なんだかどこかで聞いた台詞である。 (小倉 喜郎 (船団の会 会務委員)) 2006年7月2日 にぎりずし(握りずし)
大学生になって初めて握りずしを食べた。私の育った山間部に寿司屋はなく、「すし」は散らしか稲荷。友人に連れられて店に入った。「へい、いらっしゃい」の威勢よい声に緊張しながらカウンターに座った。注文したのは握りずしの並。「はいよ〜」の声とともに、最初のネタがバランに乗せられた。口に入れ、ちょうど食べ終えた頃に次のネタが乗せられた。私は、だされたらすぐに食べるのが寿司のマナーだと思い込んでしまった。3品目がだされ食べ終わるころに4品目がでてきた。鮨を食べるのは忙しいことだと思いながら食べ続け、最後のネタがだされたとき、「兄ちゃん、食べるの早いね」と板前さんのひと言。隣を見るとバランの上には鮨がゆったりと並び、友人はのんびり食べていた。私の思い込みのマナーと鮨がでるタイミングがあまりにも合っていたらしい。最近の回転寿司屋だと私は目を回していたかも知れない。 (岡 清秀 (船団の会 会務委員)) |