2012年6月24日

合歓の花(ねむのはな)

 最近、植物園にちょこちょこ出掛ける。電車に乗って降りてすぐのところにあり、所要時間は約三十分。春先の梅の花や、桜そして秋の紅葉もいいが、五月、六月頃の木に咲く花も素敵だ。見頃の花を目指して行くが、あちこちの知らない木に会えるのもうれしい。偶然に「ハンカチノキ」を見た時は、まずその名前になるほどなあと納得した。園では案内の地図を見ながら歩くが、目指した木が見つからない、花が終わってる、なんて時もある。でも木々の下は心地よい。先日はいい匂いのする栴檀の花に会えた。泰山木の花はほとんどが蕾。いつ咲き出すか気になった。その週末に行くと大きな純白の花がふんわりと匂い、枝先の目の高さに咲く泰山木の花に人垣ができていた。どうやら、皆の行きつけの植物園らしい。そろそろ合歓の花の季節だ。

(藪ノ内君代、「船団の会」会務委員)


2012年6月17日

紫蘇(しそ)

 少し蒸し暑くなってくるとさっぱりしたものが食べたくなる。冷奴に青紫蘇を刻んで乗せると鮮やかな緑色と香りが食欲をそそる。色と香りの両方が楽しめて、鬱陶しい梅雨の季節が飛んでいきそうな気持ちになる。 この爽やかな香りの元はぺリルアルデヒドという成分。辛味成分でもある。食欲を増進させて胃の調子を整える働きもある。
 紫蘇は中国から伝わったとされ、日本では平安時代から栽培されているらしい。中国の三国時代に蟹を食べて食中毒になった少年に、旅の途中の名医が置いていった葉を煎じた紫の薬を与えたところ、命が蘇ったのでその葉が紫蘇と名付けられたのだという話がある。 殺菌力に優れているということで刺身のつまなどとして使われる他天ぷらや和菓子など幅広く使われている。赤紫蘇は梅干しなど漬物の着色に使われる。最近では、花粉症やアレルギーにも効果が有ると言われて注目されている野菜のひとつである。
 紫蘇を食べて元気に夏を乗り切りましょう。

(藤田亜未、「船団の会」)


2012年6月10日

マタタビ(木天蓼(もくてんりょう))の花

 この季節、山道を行くと「マタタビ」の白い葉が翻っているのを目にする。葉が白くなるとだけ思っていたが、梅に似た白い花が咲き、実は「マタタビ酒」としても利用されている。身近なキウイフルーツも同じ仲間だ。枝先の葉がこの花時に白くなるのは、送粉昆虫を誘引するサインだとか。ネコが「マタタビ」特有の匂いに恍惚を感じ、強い反応を示すため「ネコにマタタビ」という言葉が生まれた。因みに同じネコ科のライオンやトラもマタタビの匂いに反応するらしい。以前、蒜山高原へドライブしての帰り道、強い眠気に襲われたが、この翻っているたくさんの白い葉に恍惚ではなく感激で救われた。

(陽山道子、「船団の会」会務委員)


2012年6月3日

桑の実(くわのみ)

 数年前、種苗店に行った日、いつもあまり木々に興味を示さない夫が「桑の木を買う」と言い出した。木には、黒く熟れた実が少しついていた。売り名は「スイート・マルベリー」。その木の前で、子どもの頃の話を楽しそうにする。学校帰りによその桑の実を失敬したとか、紫色の口で親にバレたとか、蚕の話まで。マンション暮しなので美味しい実が出来るかどうかわからなかったが、お礼肥や寒肥をきちんとやって立派に収穫できている。朝、夫はテラスでお決まりの体操をしたあと、指を紫にして実を摘む。朝食のヨーグルトに入れて食べるのだ。甘くて美味しいとは言えないが、その懐かしさに私も付き合い、毎朝ふたりで、ぷちぷち青くさい実を噛んでいる。

(火箱ひろ、「船団の会」会務委員)


2012年5月27日

鮎(あゆ)

 もう10余年前に旅した飛騨古川。ガイドブックで見た美味しいと書かれた鮎料理の店(古川観光簗)を目指しタクシーに乗った。街の背骨をなす大きく美しい川(宮川)の傍らの、無骨なプレハブ建築の食堂に着いた。
 清流に設えた簗場、その横に立つ食堂、この旨味の三条件が揃い美味しいに決まっているのに、疑いつつぶっきらぼうな梯子段を上った。壁に貼られたマジックペン書きの鮎料理のメニューの飾りっけのなさに、美味しさを感じた。果して、塩焼の鮎が来た。20センチほどのまるまるとした鮎である。川魚はそれほど好きではないので、恐る恐る箸をつけそのジューシーさに思わず美味しい!と声が出た。香ばしい匂いと柔らかく軽やかな舌触り、そんな鮎をたちまち平らげた。何の衒いもない、だだっ広い座敷に一列に並べられた食卓、客は疎らにそれぞれ席を占め和んでいる。肩の力が抜けていく悠然とした味であった。鮎の季節にだけ開けている簗のレストランである。

(中林明美、「船団の会」会務委員)


2012年5月20日

田植え(たうえ)

 先日、ご近所さんに、町内会対抗のバレーボール大会に出ないかと誘われた。日程を聞くと、6月はじめの日曜日。実家の田植えの日と重なる。「その日は田植えでして」とお断りすると「あら、ずいぶん遅いのね」と驚かれた。
 田植えの時期は地域によって差があるが、淡路島にある実家のまわりでは、だいたいゴールデンウィークに籾蒔きをして、その1ヶ月後が田植え。毎年私と夫は一応の戦力として召集され「自分の食べる米の分ぐらいしっかり働く」という合言葉のもと、にわか農家に変身して汗を流す。ほとんど機械化されているが、それでもなんだかんだと人手はいるものだ。朝から晩まで、目の前の作業だけに集中して体を動かすというのはなんとも気持ちがいい。作業の合間、畔に腰かけてみんなで食べるおやつのおいしさも格別。当日は、日焼け止めをしっかり塗って、早乙女に変身するとしよう。

(中谷仁美、「船団の会」会務委員)


2012年5月13日

蠍座(さそりざ)

 蠍座は夏の代表的な星座で、南の空に大きなS字型を描いて横たわっている。蠍の心臓付近で、赤く輝いている1等星のアンタレス(和名で赤星)が目をひく。  蠍座といえば年に数回行く北新地のお店で、私は美川憲一の「さそり座の女」を歌う。カラオケは音痴で苦手なのだが、同行した人達の雰囲気を壊さないように、3曲程歌うのである。最初に歌ったときに、お店のママから「毒気のないさそり座ですね」と拍手され、そのとき家人は「下手と言えなくて上手い表現だ」と笑った。それからは、いつもママに「毒気のないさそり座」を所望され、「毒気がないのがいい」と変な褒め方をされる。勿論遊びではあるが、本人としては下手は下手なりに一生懸命毒気を出そうと歌っているつもりなのだが、その一生懸命さをまた家人から笑われる。さて、「蠍座」で私はどのような句を詠めるだろうか。

(鶴濱節子、「船団の会」会務委員)


2012年5月6日

翡翠(かわせみ)

 兵庫の芦屋川の上流には美しい青い羽根の翡翠が数羽いる。素早く水中に潜り、魚を啄んで捕らえる。雄鳥はしばしば、枝に止まっている雌鳥のそばに持って行って、その捕らえた魚を自慢げに見せる。そしてそっと魚を銜えた嘴を雌の嘴に差し出すのである。雌が魚を貰ってくれると、満身羽をふくらましている。中には、ずいぶん立派な魚を銜えてお目当ての雌鳥に運ぶものもいるが、さっきから全く無視されている。枝にもどって嘴をふりふり、ぴちぴちする魚を雌鳥にアピールするが、先方はあっちを向いたままで気がない。満腹なのかい?という顔をして、雌鳥を見たまま、最後は静かになった魚を自分で飲み込んでいる。

(塩見恵介、「船団の会」会務委員)


2012年4月29日

葉桜(はざくら)

 花が散ったと思ったら、すぐに日差しがきつくなった。犬の散歩もこれからは、公園の葉桜の下を30分ほどゆっくりと歩く。桜の頃は人出が多くて賑やかだったが、今はひっそりとしていて、歩けばひんやりとした空気に包まれる。最近、ベビーカーに犬を乗せている人を時々見かけるようになった。今朝は、かわいい花柄の服を着た犬をベビーカーに乗せている老夫婦に出会った。ペットも家族の一員であるが、これからはこんな風景が普通になって行くのだろうか。我が家の犬も、夜は犬小屋で寝ないので、しかたなく玄関の中で寝かしている。なんだかんだといっても可愛いのだから仕方がないのだ。あっ、また鳩を追っかけて走り出す。いきなり走るな、コラッ、モモちゃん!

(小枝恵美子、「船団の会」会務委員)


2012年4月22日

春の筍(はるのたけのこ)

 お昼に食堂に行ったら、食堂のおばちゃんが朝採りを茹でたからといって筍を3本もくれた。今年は発育が悪いらしく小ぶりであった。毎年、筍シーズンにはよくもらう。今日は「甘辛く煮て天ぷらにしたらいいよ」と教わったので、聞いた通りにして食卓に出すと、子どもたちが美味しい美味しいと喜んで食べた。勤務校の食堂は、還暦を過ぎた卒業生のご夫婦が経営している。近頃はコンビニメニューの方が人気らしく、食堂を利用する生徒は減少しており、存続が危ぶまれている。しかし母校を愛するがゆえ、採算を度外視しての経営らしい。それで、いつもはお弁当の私も週に一回は利用するようにしている。おばちゃんとその半分くらいの細身のご主人との会話は関西ならではで、漫才を聞いているようにおもしろくて元気が出る。しばらくは、ご主人が早朝から山へ筍を採りに行く日が続くらしく、「またあげるからね」と言われたので、今度は筍ごはんにしようと思っている。

(尾上有紀子、「船団の会」会務委員)


2012年4月15日

菜の花(なのはな)

 昨年の秋から農薬と肥料を使わず、自然の力で野菜を育てている。さすがに無肥料だと小さく育つ。しかしゆっくりと小さく育った野菜は味が濃い上にクセがない。秋から初冬にかけて植えたアブラナ科の冬野菜たち、小松菜、菜花、青梗菜、便利菜、水菜、芥子菜、白菜、ルッコラ、蕪などが今一斉に薹立ちし、菜の花を咲かせている。これらの菜の花を日替わりで摘んでは、豚肉と炒めたり、お浸しにしたり、うどんの具にしたりして楽しんでいる。贅沢な気分だ。
 中でも白菜の菜の花が気に入り。育ちが悪く、結球しなかった白菜を放っておくと、ちょうど今ごろ花を咲かせる。この白菜がよほど美味いのだろう。ここ数日でヒヨドリがその葉を食べ尽くしてしまった。こんなことも自然の栽培では当り前に受け入れている。

(小倉喜郎、「船団の会」会務委員)


2012年4月8日

竹の秋(たけのあき)

 子供の時、父が遠くの山を指して、「この時期に、あの黄葉しているところは竹林。親竹が筍に養分を与え筍が育っている証拠。黄葉が濃いほど筍がよく育っている。」と教えてくれた。 5、6年前のこの季節、近くの竹林で親子キャンプを開催した。夜になり、キャンプファイアの終わりに、消えてゆく炎を前に話をはじめた。「俳句の季語に『竹の秋』と言うのがあります。この季節、この竹林のように、竹の子を育てるために親竹は一生懸命に…(云々)…。私たちの人生においても、親は子を育てるために…(云々)…。」 ふと見ると、お母さんたちが目を潤ませている。子どもたちは…と見渡すと、消えていく炎が気になり、小枝で炎をつついている。

(岡 清秀、「船団の会」会務委員)


2012年4月1日

桜餅(さくらもち)

 柿の葉寿司の葉っぱはむいて食べるのかと聞かれた。思わぬ質問に驚いたが、その人は桜餅の葉っぱはいっしょに食べるから、それと同じかと思ってということだった。桜餅の葉っぱはやわらかく、よい香りがしてほんのり塩味。葉っぱを捨ててしまうのはもったいない気もするけれど、私はやっぱりむいて食べる。食品成分表を見ると桜餅の廃棄率は2%となっていたが、どちらでも好き好きだと思う。
 時々茶話会をする。家でお菓子や果物などを食べながらお茶を飲むだけだが「茶話会しよう」と言うと何だか楽しい気分になる。「桜の頃隅田川の辺で、桜餅を葉っぱごと食べていた人が、皮をむいて召し上がれといわれ、ああそうですかと隅田川の方を向いて食べた」という小噺などして笑いあう。楽しいおしゃべりが似合うお菓子。関東風の桜餅も関西風もどちらも好きだ。

(山田まさ子、「船団の会」会務委員)