2014年3月30日

エイプリルフール

 蕎麦屋にて、昼休み昼食中の20代前半OL三人の会話。
 「あたしさあ、4月1日で今の彼と付き合って一ヶ月になるねん。」
 「へえ〜、記念日やなあ。なんか、お祝いするん?」
 「ううん。あたしも彼もそんなん気にせえへんから、たぶん何もないと思う。4月1日は決算で忙しいから残業やし。」
 「ふうん。そういえば、4月1日ってエイプリルフールやなあ。」
 沈黙。ご飯を食べる三人。
 「最近さあ、彼から仕事終わったら、『仕事終わったよ』ってお互い送りあっているメールが毎日、こーへんようになってん。」
 「それって、この付き合い自体が嘘やったとか言うんちゃうん。記念日がエイプリルフールやし。」
 「ええ〜!!まじで?!一回、メールで聞いてみるわ。」
 「そんなん、電話で話しいや。」
 「うちら、電話ほとんどせえへんねん。」
 「ふうん。昼ごはん、みんな580円ずつな。ほな、いこか。」

(工藤 惠 、「船団の会」会務委員)


2014年3月23日

風光る(かぜひかる)

 まだ日の高い夕刻、それまでは無人の公園に子供の賑やかな声が弾ける。通りがかりに眺めていると、それほど広くない其処に面白い分布図を見た。縄跳びの女の子達は公園のまん中に、木の上で話す男の子らは公園を縁取る高い木を陣取る、まだ幼い一団は出入口の石に集まりスケボーを履いている。と、上手く区割りが出来ている。幼い少年は、スケボーを足に付けることに真剣だ。驚くのは、大人の影が全く無い事だ。スケボー少年に、難しいでしょう?どんな風に練習するの?聞くと、初めは転ぶ練習だよと真剣な瞳が答えてくれる。愚図愚図せずに、お兄ちゃんの下へ行かないと教えて貰えないからだ。今は、ボード操作のおぼつかない少年たち、やがてハーフパイプへと伸びて行くのだろうか。

(中林明美 、「船団の会」会務委員)


2014年3月16日

草の芽(くさのめ)

 この時期、辺りが何となく青みがかり草の芽が伸び始めていることに気付く。草の名前を覚えるようになってからの散歩は、どんな草に出会えるか楽しみなのだ。ところがどうも性癖というのだろうか、庭や花壇や公園などの雑草が許せない。子供が小さいころは公園で遊ばせながら、せっせと草むしりをしていた。勝手に手が草を引いている。今でも、わずかな庭や公園、水仙を勝手に植えた街路樹の根本の雑草が気になり引き抜いてしまう。わずかな空き地も整備されて草を楽しめないと嘆いているのにもかかわらずだ。今年もまた、この相反する気持ちを抱えながら春を迎えている。

(陽山道子 、「船団の会」会務委員)


2014年3月9日

蓬(よもぎ)

 今朝はベランダに春の光が降り注いでいる。そういえば私はここ1ヶ月程、我が家の引っ越しで荷作りと荷解きに日々明け暮れて、散歩すらご無沙汰の日を過ごして来た。よし今日は散歩に行こう。夫の車で15分の山田の家迄行き、窓を開け家の掃除をしてから徒歩7分の千里万博公園を歩いた。久しぶりである。芽生えた若草の中に蓬が芽吹いているのを発見。摘んで匂いを嗅ぐと、あの独特の春の息吹がする。頬を撫でる風はいまだ冷たいが、梢や草花は降り注ぐ春の陽光にきらきらと明るい。ああいい気持ちだ。
 4月半ばには同級生から蓬を摘んで冷凍したものが今年も届くであろう。近年私はそれを心待ちにしている。同級生の優しさに触れながら、今年も蓬団子を作る予定。ささやかではあるが春の遊びとして、華やいだ気分を楽しんでいる。

(鶴濱節子 、「船団の会」会務委員)


2014年3月2日

春の雪(はるのゆき)

 年が明けて東京に二回目の大雪が降った次の日、駒場の日本民藝館を訪ねた。
 学部時代から修士課程にかけて扱ってきた「民藝」。修士論文提出と口頭試問の終わった直後のタイミングでもう一度「民藝」の生みの親である柳宗悦に会いに行きたくなったのだ。さすがに前日の大雪の影響で新幹線が遅れたりもしたのだが、どこまでも白い景色に埋れながら、いつしか僕は巡礼者のような心持ちになっていた。
 何とか辿り着いた民藝館にもたくさんの雪が積もっていて、職員が総出で道端の雪かきをしていた。その内の一人に「こんな日にまぁ…」と声をかけられ、軽く笑って応えた。
 しばらく館の前に立って僕は、「名もなき工人が作りしもの」を真っ直ぐに見つめる柳の姿を思い浮かべていた。

(山本皓平 、「船団の会」会務委員)


2014年2月23日

春一番(はるいちばん)

 春一番が吹き荒れた翌日、早起きをしてスキー場に行く。小学生の頃の話。兵庫県北部の山間にある実家は、近くにスキー場があり、3分も歩けば着く。春一番の翌日は、一気に雪が減る。早起きをして長靴を履き、誰もいないスキー場に向かう。目指すは、リフト券売り場。その付近の雪面の所々に穴が開いている。その穴の中には、百円、十円などの硬貨がある。リフト券を買うときに雪の中に落としたもの。雪が一気に解ける時に、穴となって現れる。次の行先は、屋外の飲料用自動販売機。同じように穴ができている。これらの拾得物はもちろん届ける必要がある。ただ、残念ながら田舎に交番がない。

(岡 清秀 、「船団の会」会務委員)


2014年2月16日

光の春(ひかりのはる)

 今、姫路が熱い。大河ドラマ「軍師官兵衛」が始まり、第1回目に兵庫県姫路市の広峯 神社が、クローズアップされたのだ。父の命日で姫路に帰って驚いた。商店街には官兵衛 の幟がはためき、あるお店では官兵衛グッズが100種類。お酒におでんにお猪口、そして おせんべい、その名も「かむべい」!? 人気のキャラクター「かんべいくん」には出会 えなかったけれど。今までになく姫路の町は、早春の光の中で静かな活気にあふれていた。
 晩年、宮司として広峯神社にお仕えした父に、その様子を報告した。「ほうか、ほうか、 よう来たなあ」。無口な父の嬉しそうな声が聞こえたような。光が春を先取りしているようなきらめきの中で。姫路は、今まさに「光の春」に包まれている。

(村上栄子 、「船団の会」会務委員)


2014年2月9日

孕猫(はらみねこ)

 近所に気になる野良猫家族がいる。その白い母さんがまた大きなお腹をしている。彼女の遠い血脈はかなり良かったと思われる。白い毛は少し汚れているが、ちゃんと舐めて手入をし空色の瞳で猫相が良い。どんな事情でどの世代で野良になったか、もう何匹子を産んで育ったのかわからないが、猫としてちゃんと生きている。今日も大きなお腹で、少し前を見てアスファルトの道を、ひたひたひたひた真っ直ぐ歩く。堂々と立派な野良の母さんだ。
 そんな母さんに出会うと、家から出さず、猫らしい生き方をさせなかった飼い猫を思い、ちょっと心がちくっとする。

(火箱ひろ 、「船団の会」会務委員)


2014年2月2日

鬼は外、福は内

 立春ですので、俳人の豆まきをします。
 <常日頃心がけておくこと>
 一、季節 二、早寝早起き 三、今日の飲むためのお金 四、女性への優しさ 五、昨日の服を今日も着ないこと
 <考えなくて良いこと>
 一、社会的地位 二、他人の失敗や成功 三、自己の才能の有無 四、終電の時間
 <何よりも心がけておくこと>
 原稿の締め切り。

(塩見恵介 、「船団の会」会務委員)


2014年1月26日

春三日月(はるみかづき)

 京都御所の前を自転車で滑走していると、目の前にやけに大きくて黄色いお月さまが浮かんでいた。大きなお月さまというと、東の空にのぼるまんまるお月さま。でも、目の前にあるのは、西の空に浮かぶ三日月。それも何かぶら下げられるような三日月ではなくて、お皿のように何か安定して置けるようなお月さま。お椀まではいかないけれど、ちょっと深めのお皿。あまりに安定して物を置けそうなので、空から下へ下へと沈んできたみたい。
 このお月さまは、春三日月というのだそう。皆さんは、この三日月のお皿に何か入れてみられるならば、どんなものを入れてみたいですか?

(舩井春奈 、「船団の会」会務委員)


2014年1月19日

焚火(たきび)

 息子の通う自主保育「森のようちえん・そとっこ」には暖房がない。というか、園舎の代わりにビニールハウスがあるだけで、晴れた日はみんな外で過ごす。だからこの季節は毎日焚火をする。枯葉を集め、小枝を集め、中くらいの木を積み、大きな丸太を積む。私は焚火係と称してずっと火の側にいる。
 子どもたちは氷をつかんだり、泥団子を作ったり、鬼ごっこをしたり。中にはTシャツ一枚着て裸足で森を駆け回っている子もいる。そんな子どもたちがときどき焚火のところに来て、手を暖めたり焼芋や餅を食べて、また森に駆けて行くのである。

(小倉喜郎 、「船団の会」会務委員)


2014年1月12日

ラグビー

 走る走る俺たち、流れる汗のそのままに♪…と、花園ラグビー場の応援席から歌声が聞こえてくる。全国高校ラグビーの優勝試合の時のこと。7日は青空が広がり、青と白のユニフォームが鮮やかに動いた。東海大仰星が桐蔭学園を破り、7大会ぶり3回目の優勝を果たし、ラガーたちの顎の赤い傷が誇らしげだった。また、5日の大阪桐蔭と桐蔭学園の試合では、桐蔭学園が7トライをシャンパンラグビー的 (泡がわき続けるような華麗さ)に決めたのが気持ちよかった。夫が学生時代にラグビーをやっていたので、私も好きになり、冬になるとラグビー熱が沸騰する。

(小枝恵美子 、「船団の会」会務委員)


2014年1月5日

新年(しんねん)

 近くの神社へ初詣に行く途中の桜の枝先には、春を待つ小さな冬芽が付いている。その先のマンションの建設現場を囲む塀の、出入り口の扉には注連飾りが付けられている。ひっそりと静かだ。何とはなしに背筋を伸ばす新年の清々しい空気。
 先日、熊本県に「南阿蘇水の生まれる里白水高原駅」という長い名前の駅があることを新聞で知った。日本で一番長い駅名らしい。それにしても、水の生まれる・・・駅はとても素敵。行ったことはないけれど何やら清々しい空気感だ。ネットで検索したら阿蘇連山と田園風景が広がっている。清々しい空気のその源泉が気になるお正月。

(藪ノ内君代 、「船団の会」会務委員)


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