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2020年2月9日

確定申告(かくていしんこく)

 今年は楽しそうに確定申告準備に取り組む連合いの姿がある。昨年末に連合いはガン宣告を受けたのである。学生時代レスリング選手だった彼のからだはずっと頑丈だった。ショックというより狐につままれた感じ。しかし、その後好運が重なった。早期発見のため手術は簡単。混雑の手術予約は、キャンセルが出たため年初めに潜り込む。4日間入院したのち退院。宣告から約半月で元通りになった。転移はなし、薬は不要。手術後、切り取った8ミリのガンを医師は私だけに見せてくれた。すぐに病理検査に出すという。狐につままれたままの今がある。「どんなんやった?」「ガラスの小瓶に入ったクリオネやった」と言いながらふたりで各種領収書群を整理している。
(小西雅子、「船団の会」会務委員)


2020年2月2日

凍る(こおる)

 ものが凍りついた姿というのは潔いものだ。雪のような抒情が一切排除された世界では、思いも言葉も動く気配がない。そういった世界では、あらゆるものの本当が姿を現すのかもしれない。
 何万年も前の凍土から発見されたマンモスは、実に美しい姿をしていた。遥かな時をへだててというような思いは多分感傷だろう。言葉を介在させない何も語る必要のない、ものそのものの姿が圧倒的だった。それはひとつの完結だった。
 春が来ても、凍ったものたちはけっして凍る前の姿で甦ることはないのだと思う。
(木村和也、「船団の会」会務委員)


2020年1月26日

節分(せつぶん)

 京阪沿線にある成田山不動尊は、節分の豆まきでも有名だ。毎年、NHK朝ドラの出演者が殻つきピーナッツをまく。数年前、玉木宏ファンのママ友と一緒に、わたしも福をもらいに出かけた。9時に最寄り駅に3人で集合。普段はがらがらの参道は、長蛇の列。境内は、警備員の誘導で、到着順に区分けされる始末。
 時遅し。玉木宏のピーナッツでなく、わたしたちは、協会のおじさんの投げるのを受け取るエリア。しかも、つばの広い帽子や捕虫網、袋までもっている参列者もいた。素手で、どうにかひとつ受けた。寒風のなか、ピーナッツは、とても貴重に思えて後生大事に持ちかえる。帰宅後、同じようなピーナッツがビールのつまみ用にたくさん買い置きしてあったけれど。
(衛藤夏子、「船団の会」会務委員)


2020年1月19日

海鼠(なまこ)

 夏目漱石は、『吾輩は猫である』のなかで、「海鼠をはじめて食ったひとの勇気と精神力に敬服する」という趣旨のことを書いている。同様のことは、西洋の小話にもあるらしい。
 ナマコは、料理屋で出てくる「ナマコ酢」(これがコリコリ・あっさりして珍味だ)では食欲がわくのに、実物はグロテスクだ(私はもちろんそのまま食べようとは思わない)。さらに、その生態などは実におもしろい。
 この落差は、俳句にとって格好の俳味ある素材だ。
 たとえば、私もかつてこんな句をつくったことがある。
 「まえむきにバックしてます赤海鼠」  いかがでしょうか?
(秋山 泰、「船団の会」会務委員)


2020年1月12日

風花(かざはな、かざばな)

 もう、10年ほども前のことだろうか。京都のデパートで軽く買い物をして、外に出ると空から白いものがちらちら。雲はなく青い空。へえーっ!? しばらくは、いわさきちひろの描く赤い毛糸の帽子と赤い手袋の少女の気分で、その白いものを見つめる。
 ところで、昨年10月15日、朝日地球会議2019で、ポツダム気候影響研究所理事のヨハン・ロックストロームさんと動画中継し、キャスターの国谷裕子さんが対談した。人間が地球を変える力を持ってしまった今、地球を正しく管理することが必要になるとの国谷さんの言葉を受け、ロックストロームさんは、その通り、と。温暖化による「地球の限界」を超えないように、と。「地球の限界」……。ああ、そういえば。あの白いちらちら、風花も、このあたりではここ数年来あまり見ることができないなあ、と改めて思った。
(村上栄子、「船団の会」会務委員)


2020年1月5日

雑煮(ぞうに)

 「うちの雑煮は丸餅で白味噌」「うちは切り餅。出汁はお澄ましに具は小松菜ぐらい」うちの職場は各地から上京した人が集まっているせいか、正月前後は雑煮の話題で盛り上がる。私は神戸出身だが結婚当初から、正月は連れ合いの実家がある広島に帰省する習わしだったので、雑煮も嫁ぎ先の味になった。出汁は鶏ガラと昆布を合わせたもの。湯がいた餅の上にブリの照り焼きと椎茸、彩りにホウレンソウ、紅白のかまぼこを乗せて少し濃いめに味を利かしたアツアツの出汁をかける。今年こそ面倒な雑煮もお節もやめよう、と思いつつ三が日を過ごした。今日は五日だけど、昨日から仕事が始まり正月気分も吹っ飛んだ。パンとコーヒーで362日過ごしているわけだから、三が日の雑煮ぐらい ま、いいか。
(三宅やよい、「船団の会」副代表)


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