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2017年 4月16日

山笑う(やまわらう)

 毎朝娘を駅まで車で送る。道沿いには様々な樹々があり、春は梅に始まり、木蓮、辛夷、ミモザが咲き、今は桜が満開。今年の桜は開花が例年より遅かったけれど、花冷えもあり、長く楽しませてくれている。霊園の桜、甲南高校の桜を眺め、有馬へ繋がる県道に突き当たって信号待ちをしていると眼の前に鷹尾山が迫る。ぽっ、ぽっと山桜が目に入る。そのぽっ、ぽっが日毎に増えていく。
 期待と不安の新学期、緊張感と入れ替わるように疲労感が増してくるけれど、山桜のピンク色が増していくのを見ていると、嬉しくなってくる。高校2年生になった娘は親しい友達とクラスが離れて落ち込んでいたが、少しずつ新しい環境に馴染んできたようだ。保育園の送迎から始まり、ずっと続いてきた朝のドライブだが、いつまで続くのだろうか。川沿いの下り坂の花水木もようやく色付きはじめた。

(尾上有紀子、「船団の会」会務委員)


2017年 4月 9日

風船(ふうせん)

 野山の雪がすっかり消えたころ、薬売りのおじさんがやって来る。置き薬を交換するためだ。小学生の頃の話。
 置き薬は、縦横20cm、高さ30cmほどで2段の引出しの薬箱に入っていた。おじさんに薬箱を渡すと、使った薬は補充し、いくつかは新しい薬と取り替えた。母のそばで見ていると、いつも最後に風船をくれる。最初は紙風船だったが、そのうちにゴム風船になった。幼い私には膨らますのは難しく、母に膨らませてもらった。膨らんだ風船には、薬の名が書かれていた。おじさんは薬を入れ替えると、薬が詰められた三段重ねの箱を大きな風呂敷で包み、器用に背負って隣りの家に向かった。2kmの山道を登り、60戸の家を回るのは大変なことだ。そんな量が、あの箱に入るのだろうか…。ある日、不思議なことがおきた。腹痛で薬を飲もうと新しい袋を開けると、中には薬と同じ重さほどの紙屑が入っていた。その紙屑は、前に村で配布されたものの破片。薬袋の底はきれいに切られ、再び貼られていた。謎は解けた。ただ、全ての家や薬売りがそうではない。

(岡 清秀、「船団の会」会務委員)


2017年 4月 2日

春休み(はるやすみ)

 青森の小学校を卒業した日が引っ越し日だった。校庭でみんなに別れを告げ、父の運転する車は一路、京都に向かった。青森から京都までは長い。途中、仙台あたりだったろうか、見知らぬお宅に立ち寄った。父の知り合いだったろうか。
 父母は楽しく過ごしているが、子供には退屈な時間が過ぎていく。外で弟と遊んでいたかも知れない。そうこうしているうちにお腹の調子が悪くなってきた。田舎の小学校を卒業したてで、住み慣れた土地を離れ、不安だらけだったせいかもしれない。長い時間、狭い車の中で疲れていたのかもしれない。それに加えて見ず知らずのお宅。どうしよう、どうしていいかわからない。お腹の調子はますますおかしくなる。とうとう・・・。
 母のあきれた声が今も耳に残る。春休みのかなしい思い出である。

(おおさわほてる、「船団の会」会務委員)


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