取れたて俳句
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2020年6月8日
募集期間:5月24日〜5月31日
兼題:「少年、または少女」

少年から夏を強奪しましたね   かわばたけんぢ
少年だ水羊羹と喉仏       村上ヤチ代
ぴかぴかの約束少年とやもり   村上栄子
少年と火星の少女青田道     山口久子
全員がもっこり海パン少年団   おおさわほてる
崖っぷち蟻と少年近寄るな    新元光代


 6句、いいな、と思った。俳句についていろんな考えがあってよいのだが、創作という観点から見れば、基本的に過激、破格、新鮮でなければいけない。
美術でいえばモダンアートだ。今回の6句は見た途端いいいと思った。どこがいいか、を述べるのは理屈になる。絵のよさを説明するような散文的な行為になるのだ。ともあれ、今回の6句は言葉が跳びこんできた。そして私にささった。
(選評・坪内稔典)


2020年5月31日
募集期間:5月18日〜5月24日
兼題:「空」

 青空が味方してるぜ青大将   鶴濱節子

 今回は一句のみ。67句の応募があったがたいていは平凡、発想も平凡で冒険心を欠いている。
「船団」では上手い句を器用につくっても仕方がない。そういう場所ではない。575の表現を通して、新しい自分の言葉を獲得する場所だ。獲得した新しい言葉は新しい自分である。
(選評・坪内稔典)


発表日:2020年5月24日】
募集期間:5月11日〜5月17日
兼題:「初夏」

エジプトの石ころがして初夏の家   鶴濱節子
夏初め世の中複雑ぼく単純      おおさわほてる
初夏をゆくジーパンとあんパンと   北村恭久子
同量のウィルキンソンで割った初夏  高田留美
初夏のケースのなかにハーモニカ   松本秀一

 「初夏」の応募句は78句。エジプトの石が抜群。初夏の家がエジプトの家のようになって、世界がぐんと広がる。5句のほかに「くにゃと座るはつなつの風入れながら」「ならず者連れて初夏はずかずかと」「初夏の裸婦のデッサン左きき」「川の始まりまで自転車で初夏だった」「はつなつの血管は草荒れ地の草」を直したいと思った。リズムを整え、語順を変えたりしてほしい。ちなみに、この初夏、私はジーパンがはけるようになった。「初夏をゆくジーパンとあんパンは」自分が作ったのではないか、と一瞬錯覚した。
(選評・坪内稔典)


発表日:2020年5月17日】
募集期間:5月4日〜5月10日
兼題:「距離(ディスタンス、間隔、間合いなども可)」

母の日の母と海とのディスタンス   みさきたまゑ
アリに距離感義務感達成感      松代享子
ディスタンスの話をしましよ蟻さんと 山岡和子
距離を保って人参と木星は      川嶋ぱんだ
お互いの間合いは違う薔薇を見よ   植田かつじ

 今回は64句の中から5句を選びました。
 緊急事態宣言が一部で解除され、元の暮らしに戻る、という発言をテレビで耳にします。この言い方に私は反対です。
 元の暮らしに戻ってはいけないと思うのです。俳句だって、句会や吟行、雑誌や句集の刊行などが、以前のままだと、おそらく時代から取り残されます。俳句そのものも変化しなくては。そのためにはまず言葉を新しくすることです。今までの俳句になかった言葉を使ってみることです。大胆に奔放に変化したい!
(選評・坪内稔典)


発表日:2020年5月10日
募集期間:4月27日〜5月3日
兼題:「薔薇(バラ)」

 ディスタンスとればとるほど薔薇の罠   秋山 泰
 バラ咲いて海辺のカフカ読み始め     里井貴美子
 ばらが咲いた私はせっせと歯をみがく   山岡和子
 憲法がすくすく育つ薔薇のカフェ     高田留美
 薔薇一輪眺めて卵かけごはん       夏冬春秋

 今回の「薔薇」の応募句は58句、その中からベスト5を選んだ。
 解説はしないが以下のようなことを感じた。「読み始め」は推敲の余地がありそう。「ばらが咲いた」はなぜ「バラ咲いた」でないのか。「憲法の」のほうがいいのではないか。
 「サージカルマスクをとるな薔薇になる」「バラ咲いた今日ケンタッキーにしない」「順々に家族が起きて薔薇の庭」「レムデシビルに味方する薔薇の棘」などは直し方によってよくなりそう。
(選評・坪内稔典)


発表日:2020年5月3日
募集期間:4月20日〜4月26日
兼 題:「白詰草(クローバ)」

  咲ききってしろつめくさも老人も   北村恭久子
  老人よ一発殴られクローバーへ    かわばたけんぢ
  遺産には白詰草の咲く野原      かわばたけんぢ


 今回は3句、「咲ききって」は冷静な凝視に共感します。「老人よ」は老いたイーストウッドみたい。最後の「へ」はいらないよ。
 「遺産には」にもさめた見方があって共感します。
 「カント読む白詰草に寝転んで」「自由老人の座席ありますクローバー」「逢うときは白詰草を摘んできて」「会いたくて三角座りのクローバー」「恋情は沸いてくるもの白詰草」は上手ですが、一種の既視感があります。恋とクローバーの取り合わせは既視感が濃厚です。
 ハチャメチャを勧めていますが、ハチャメチャをするのはむつかしいです。でも、言葉の上だからこそ羽目をはずし、大胆にも奔放にもなれます。
 ハチャメチャをどうぞ。
(選評・坪内稔典)



発表日:2020年4月26日
募集期間:4月13日〜4月19日
兼 題:「晩春」

  鍋底のお焦げみたいね晩春だ     山岡和子
  晩春はバナナに少し詫びて剥く    夏冬春秋
  晩春、ちょっとずつ猿っぽくなる   原 ゆき


 今回の「晩春」で採れる句はかろうじて3句。鍋底のお焦げという比喩は、読者のお焦げに対する思いに従って鑑賞が揺れそう。つまり、いろんな読み方がなされるだろう。だが、鍋底のお焦げという具体性はよい。バナナに詫びる行為を読者はどのように受け取るだろうか。以上の2句、片言性がとても強い。3番目の句は自由律あるいは1行詩であろう。575のリズムと無縁な作品だが、晩春が猿っぽくなるのか、晩春の人が猿っぽくなるのか、その曖昧さがおもしろい。
 試み、挑戦、冒険の作を寄せてほしい。自分の従来の句風を壊すか、自分の域をはみ出して作るべきだ。
(選評・坪内稔典)



発表日:2020年4月19日
募集期間:4月6日〜4月12日
兼 題:「コロナウイルス」

  たんぽぽは新型コロナの又従兄弟    おおさわほてる
  春が好き私もコロナウイルスも     谷さやん
  山桜でんとコロナウィルスふわと    高田留美
  コロナへのまじないとしてチューリップ 原 ゆき


 むつかしい題だったと思う。生々しいので時事性が強いし、なにしろ7文字もある。でも、船団の仲間がこのウイルスにどのように立ち向かうか、ちょっと楽しみだった。応募60句の大半はコロナに負けて嘆いている。あるいはあきらめている。そんななかで、コロナをタンポポの又兄弟にした作が一番よい。又兄弟くらいの距離で対応するのがコロナにはよさそうではないか。撃退するだけではおそらく駄目で、コロナとは一種の共生をするほかはないだろう。とすると、「春が好き」という点でコロナと同格になるのも一つの方策である。また、山桜とコロナを同格の位置に置くのも同様の対処法だ。チューリップの句は見方の面白さを買った。今、チューリップが花盛りだ。
(選評・坪内稔典)



発表日:2020年4月12日
募集期間:3月29日〜4月5日
兼 題:「桜」

  桜桜大空青くチョウゲンボウ    西村亜紀子
  粗挽きの豚肉2キロ夕桜      渡部ひとみ


 「桜」の応募句は74句だった。その中の2句を発表する。これ以外はほぼ駄句である。コロナウイルスに負けていて、取り合わせの大胆さに欠ける。心身が委縮しているのではないか。ハチャメチャな発想があっていいし、意表を突くユーモアや表現も欲しい。そうでないと、桜という季語に負けるし、もちろんコロナウイルスの跋扈を許してしまう。チョウゲンボウの句は快い風景をすっきりと表現した。コロナなどどこ吹く風か、という風情だ。それがとてもよい。粗挽きの句はよくは分からない。でも、この粗挽きの豚肉と夕桜の言葉の絵は、なんともなまなましい。それがよい。
(選評・坪内稔典)



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